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WHITE ALBUM2 レビューもどき。(ネタバレなし!)




WHITE ALBUM2 レビューもどき(ネタバレなし!)。



今回はネタばれを避けた上での感想(これのこと)と、
プレイ済みの方が読まれるのを前提とした各√毎の感想の、
二段構えでいきたいと思います。




事前情報と購入動機(興味がなければ読み飛ばしてください)


出た当時から話題になっていたので、低アンテナで感度の悪い私でも流石に知ってはいました。
ただ、聞くところによると-introductory chapter-という序章でしかないらしく、
続編が出て完結らしかったのでなんか中途半端だなと感じてしまったこと、
また、どうせならWHITE ALBUMやってからかなーなんて感情が入り混じった結果、放置プレイしてました。

興味あるくせに興味のない振りしてる中学生みたいな奴。
それが恥ずかしながら当時の私でした。


で、実際に-closing chapter-が発売されるとなった頃、
当たり前のようにWHITE ALBUMに手をつけてなんかいなかったし、
そもそも卒論書いててそれどころじゃなかったし、金欠だったしで完全に失念していました。

卒論を終えても塾講師のバイトで生徒の受験対策に付きっきりだったり、
最後のモラトリアム期間を満喫していたり。

就職したらしたで慣れない社会人生活。
気付けば就職早々一ヶ月で仙台に飛ばされ、見知らぬ土地で初めての一人暮らし。

もうこのときには、名作としてネット上のいたるところで絶賛されているのを目にしていた訳ですが、
出遅れ感全開で諦めたのでした。

田中ロミオ信者を自負する身としては、
関心がRewrite Harvest festa!に移っていたのも大きかったのでしょう。


そんな私が今更プレイするきっかけとなったのは同タイトルのアニメを見たからです。
撮りためていたものの、恋愛描写が辛いとかの話で避けていたのですが、
意を決して1話目を視聴。
……何これ、面白いじゃん!

続けて2話、3話と全部消化して、続きが気になってしまい原作購入を決意。
この青空に約束を―でボロ泣きさせられた丸戸史明氏がライターというのは勿論知っていたので、
まあ間違いないでしょ、と即Amazonでポチった。


ここまでが購入動機。
無駄になげぇ……。



ストーリー概要

第一音楽室でギターを奏でる男が一人。
隣の第二音楽室の一人が、拙いギターに合わせてピアノを弾く。
その音色につられて歌い出した、もう一人。

そのとき、誰かが誰かに恋をした。
一足遅れの、してはいけない恋を。

惚れた腫れたの三角関係と言えばそれまでの、
だけれど、強く、深く、胸を打つ、
とある切ない冬のお話――




大まかな感想

泣いた。
全俺が泣いた。

噂通りに、胸が軋む。
張り裂けそうなほど痛む。
でも、なんでだろう。
手が止まらないんだ。
やめられないんだ。

駄目だってわかってるのに。
このままだと私どうにかなっちゃうってわかってるのに。
それでもマウスを規則的にクリックしてる自分がいる。

それはさながら中毒症状というか、ジャンキーというか。
それだけ惹きこまれるっていうのはやはりすごいことですよね、これ。



テキスト面

相変わらずの丸戸氏の安定感に完敗し、乾杯したくなります。
会話文を主体に、うまーく状況説明や心情を織り交ぜてくる技術に磨きがかかっていますね。
加えて、テキスト運びの巧みさ。
テンポというかリズムがすごくいい。

ウィンドウに表示される文字数にまで気を配っているのではと感じさせる洗練さ、無駄のなさ。
ほどよい場所での小まめな改行。
これらがテンポのよさに寄与しているのだろうと思われます。

何より特段難しい語句を用いず、
誰もが当たり前のように常日頃使っている言葉だけで文章を成り立たせているのがすごい。
それなのに全然つまらなくなくて、っていうかむしろ面白いのがスゴ杉内。

癖がないのに、癖になる。

なんだこれ、神業じゃねーか……。

ギャグも結構好きです。
よく思いつくよなーという言い回しも多いし、
とにかくこの点では万人に薦められます。



シナリオ面

これまた素晴らしい。
今までやってきた私のエロゲ遍歴内でもトップかもしれません。
家族計画とどっちが上か迷って悩んで、答えが出ないくらい。

世界が注目するピアニストや、校内一の超美少女こそ出てはくるものの、
不思議な世界に迷い込んだり、非科学的な力を使えたり、超常現象が起きるでもない。
ごくごく普通の日本で生活する彼、彼女らの恋愛話。

なのに、読める。
読ませる。読ませられる。

やり尽くされたと思わせる三角関係も、
これだけ徹底的にキャラクターの設定の作り込み、
人格、状況、心情を具に、ことこまかに描き、積み上げ、組み立てれば、
こんなにも素晴らしい物が出来あがるのかと感服しきりでございました。

面白くもあり、酷く胸が痛む裏切りも多々ある。
でもそれは、誰もが幸福になりたくて足掻いた結果に拗れてしまっただけで。
悪役は人によっては見出してしまうかもしれませんが、悪人は一人もいなかった。

大筋と言えるトゥルー√は存在しますが、
分岐する√のどれもが辿り着きうる可能性に満ちた、説得力のある√でしたし、
進んだら進んだらで、どれもが起伏に富んだ重厚なシナリオでして、
その完成度の高さには舌を巻かざるをえません。

また、違う√に入ったことで事象というか、
シーン、状況の見方や意味合いがガラリと変わる様はマジで鳥肌もの。

*これは、SCA自先生のツイッター上での言及が的確だと感じました。

これらは各√が密接に関わり合っているから成せる業なのでしょう。
毎回毎回どうやってこんなの思いついてるんですかね?
尊敬しますわ、本当。


エロシーンは、
うんまあなんていうか、エロさとか全然感じませんでしたね。
愛情表現の一種であり、背徳感の演出であったり、逃避であったりもした。
重要な場面であることは疑いようのないものですし、
この作品、はっきり言って濡れ場抜きでは語れないのですが、
残念ながらエロくはなかった。

……ぶっちゃけ、使えなかった(何かに)。



システム面

基本的なものは標準装備。
ことあるごとにセーブしておきたい私としては、
セーブスロット100個だと物足りなかったくらいでしょうか。
あの長さだったら倍は欲しいなぁ。


音楽面

文句なし。
流石Leaf。

まして今回は学園祭でバンド演奏するのがひとつの目的の作品でして、
肝心要の柱ですからね、ここがコケちゃうと色々とまずいのでしょう。
しかしながら、心配は御無用という感じで、
サントラ全部買っちゃったくらいにはボーカル曲もBGMもいいので、安心して下さい。


ボイス面

配役がいいですね。
どのキャラクターも声優さんらの好演が光ります。

主人公までもがフルボイスなのもよかったです。
(合わないと思えば設定で切られるので、その点はご心配なく)

よくあるじゃないですか、エロゲギャルゲの主人公が写真なんかで出て来ても、
前髪長くして目を映さないような演出。
詳しくないですけど、たぶん明確にキャラを描かないことで、
プレイヤーが主人公に重ねやすいように、感情移入しやすくしてるんじゃないかなって思うんです。

でも正直、個人的には好かないんですよね、それ。
そんな曖昧な存在に惹かれてくヒロインって安っぽくない?って思うので。

けれどこの作品は主人公である春希を、よくも悪くも描き切ってる。
ボイスもついて、キャラデザもしっかり出して、これがこの作品の主人公なんですよって。
そういった割り切ったスタンスが感じられて、よかったなって思います。
演技もよかったですしね。



総括


やりましょう!(某禿風)

youやっちゃいなよ!(某事務所社長風)


……なんて言いたいところなのですが、これが少し難しい。
何せ、テーマのひとつが「浮気」ですからね。

メインヒロイン二人の挟間で右往左往する主人公に辟易する人もいることでしょう。
受け付けない、肌に合わないという方に無理矢理薦めていい作品でないことは確かです。

そういうのにそこまで抵抗のない私ですら、
心を抉り、毟り取られるような感覚に陥ったのですから。

ただ、本気の恋愛模様を見て、感傷に浸りたい人。
傑作とも呼ぶべきストーリーに触れ、舌鼓を打ちたい人には是非やって欲しいなと思います。

それだけの価値があることは、
時間を忘れ、仕事を半分投げ出すようにして二週間がかりで駆け抜けた私が保証します。


点数を付けるなら百点満点の花丸です。
後にも先にも、これだけ泣いて笑って泣いて、
そして苦しんだ作品は出てこないかもしれません。


話題になるだけのことはあります。
願わくば、一人でも多くの方がこの作品に触れてくれますように。






ネタバレありの各√毎の感想はこちらから。





また、ご意見ご感想がございましたらコメントやtwitterにてお寄せ下さい。
反応がありますと、画面の向こう側で泣いて喜びますので、是非是非。






 

| soemon | 21:40 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
WHITE ALBUM2 √毎のレビュー ネタバレあり!






WHITE ALBUM2 √毎のレビュー ネタバレあり!





※プレイ済みの方が読まれる前提で書いています、ご注意ください!!




※ネタバレなしの感想はこちらからどうぞ。








 

-introductory chapter-

序章にあたります。

ここの話はなんというか、
過去にこういうことがあったんだよという、長い回想的位置づけのようです。
スター・ウォーズのエピソード1みたいな感じでしょうか。
スター・ウォーズ見たことないんですけど。

それを裏付けるように、
時折、振り返っているような描写が見られます。

例、かずさと雪菜が出会うシーン。

俺はこの時、全然気づいていなかった。

小木曽のタイミングが絶妙だったことも。
冬馬の表情がやたらと微妙だったことも。



話が進んでから、後で過去回想を明かすパターンはよくあれど(スター・ウォーズもそうですね)、
過去回想を最初に持ってきてリアルタイムで追わせてくれる作品は、
きっとそれなりにあるんでしょうけど、これといってすぐには浮かんできません。
結構面白い試みではないかと思います。

既に終わったことであるから、選択肢は出てこない(つまり、不可変である)。
俗に言う、一本道というヤツです。

あらすじを書くのが面倒なので書きたくなかったんですが、
一応簡単に要約してみました。


三人で仲良くいられた学園祭までは最高の時間だった。
しかしながら、お祭りの後からその関係は一変してしまう。
元々好き合ってたピアノ(かずさ)とギター(春希)の間にボーカル(雪菜)が割って入り、
春希を取ってしまった。

春希は春希で雪菜に惹かれていく自分を自覚しながらも、
一番好きな冬馬のことが常に頭から離れずにいた。
付き合っている二人と一緒にいることに耐えられないかずさは、
和解した母とともにウィーンへ渡る決意をする。
その事実にいてもたってもいられなかった春希はかずさに詰め寄る。
そして、本当は両想いだった事実に打ちのめされる。

結果、最後に春希は雪菜を裏切り、かずさに走る。
かずさは一時求めに応えるも、そのままウィーンに向け出立。
雪菜は立ち尽くす春希に寄り添い、自分をかずさの代わりにしてもいい、
代替物にしてもいいと甘い言葉を囁く。

みたいな感じでしょうか。


雪菜は過去のトラウマから、仲間外れにされることを極端に避けていた。
本作屈指のナンバー「届かない恋」に込められた春希の想いや、
かずさと春希の間に流れる空気、関係性から、
雪菜は二人はいずれ恋仲になるであろう予感をひしひしと抱いていた(と思う)。
そうすれば二人と、一人。
三人ではいられなくなってしまう。
それだけは避けたかった。

何よりの決め手となったのは、学園祭での演奏後、第二音楽室で舟を漕ぎ始めた春希に、
かずさがキスをする場面を目撃してしまったこと。
予感を確信に変えた雪菜は、目を覚ました春希に告白する。

女の子としての魅力に溢れた雪菜に、どんどん惹かれていった春希。
なし崩し的に応えてしまう。

これがひとつの決定的な分かれ道だったのでしょう。
かずさが逃げずに、起きているときの春希に想いを明かしていたら、
春希が意志を強く持って、雪菜の告白を断っていたら、
そもそも、雪菜が告白なんかしなかったら、
たらればに意味なんかないんでしょうけど、
何かが違ったら、ここまでの悲劇にはならなかったと思うと辛いものがあります。

一周目だとかずさがスリープ中の春希にキスしていた事実は伏せられているので、
かずさがここまで春希に入れ込んでることは分からず、だからこそ、
かずさが春希を好きだったことを明かすシーンのカタルシスったらないんですよね。

雪菜の気持ちも分かるし、魅力的な二人に揺れ動く春希の気持ちも分かる。
誰が悪いとか悪くないとか、そういう言葉で括りたくないなぁ。
強いて言うなれば、そういった状況に陥ってしまった不運が悪というか、ね。

あと個人的に辛かったのは、
春希がかずさに迫ってキスした際、「なんでそんなに慣れてんだよ!」みたいにぶつけられるシーン。
あれは、くる。
胸がいてぇ。

空港での独白は雪菜のものだったと明かされる訳ですが、
改めて、こんなはずじゃなかったんだろうな、と。
ああ……。

 

-closing chapter-


件の別れから三年後。
峰城大に進学して尚、付かず離れずな微妙な距離感のままの二人。

春希は実家を少し離れて一人暮らしを始めていた。
雪菜との距離をとるために、三年になってから転部したり、バイト漬けの日々を送る。

伊緒や武也らのお節介によってクリスマスデートをするも、
かずさを忘れられない春希のひたむきな愛を、
春希が出版社のバイトで担当したかずさの特集記事から見出してしまった雪菜は、
かずさを忘れたと嘘を吐く春希を拒絶する。

この一件で心が折れかかってしまった春希は、
大学の同級生、バイトの後輩、バイト先の上司に逃げるか、
雪菜に再度向き合うかで√が分岐する。



和泉千晶√

大学の同級生。ゼミ仲間。
女を感じさせない女。
今の春希にとって心地いい、都合のいい女。

だがそれは演技だった。
真の姿は演劇サークルの花形、演技派美人女優。

三年前の学園祭のあのときから、ずっと片思いしていた女性。
あのときの三人の再現を、舞台を作り上げるため、
春希に、そして雪菜に接触したのだった。


シナリオとしてはすごくよく出来てたんですよね。
ある種の狂喜めいたものをもストーリーに組み込ませ、かつ馴染んでいる点が。
ああこれ、すげぇ計算されてるって。

作中作のお芝居を絡めてくる手腕には脱帽しました。
アイドルになり夢を叶え、そして恋も、両方ともを手に入れようとするする在り様は、
雪菜という存在にある種の解を示していると思うのですが、
加えて、WHITE ALBUM(無印)も踏まえているんじゃないのかなと。

プレイしたことがないので、憶測とすら呼べない思いつきなのですが、
あれは彼女がアイドルになり、自然と一緒にいる時間が減り、疎遠になっていく。
そして主人公は浮気をしてしまう、みたいな話だと聞いていますからね。
無関係とは言えないのではないのかなと。
やはりいつかやってみたいですね、WHITE ALBUM。


閑話休題。
あれこれ書き、脱線してしまって申し訳なかったのですが、
取り敢えず、「春希にとっての都合のいい女」という演じてた部分のキャラクターが、
個人的にあんまり好みじゃなかったんですよね。

演じてまで近づいてきた本当の和泉は結構好きなんですけど、
演じてたキャラ自体が好かない。

あと、なんとなくですけど、スパイラル〜推理の絆〜思い出しました。
あはは。

ああ、それと、峰城大FMで「届かない恋」が流れる度、
なんで一度きりの、あの一曲の音源が流れてるんだろ?って不思議に思っていたのですが、
その点を自然に回収してみせたのには唸ってしまいましたね。

三年前から計画的に動いていたとか、
全然思い至らなかったですわ。びびりました。

ただ、大学内のコミュニティラジオ(ミニFM?)如きに、
あれだけの影響力があるかは少々疑問ではありますが……。

 

杉浦小春√

誰かさんによく似た女の子。
小春希。
これ、小春が春希にかかっているんですよね。
くすりときます。

出会いは彼女の友人である美穂子を酷い形で振った春希を問い詰めるところから。
何故かバイトで一緒になり、知らぬ間に学園祭の頃の春希を知り、段々と気になる存在に。

雪菜に拒絶された夜。
傍にいて、話を聞いてくれたことにより√突入。

けれど、その場面を美穂子に目撃されてしまっていたことを切欠に、
坂を転げ落ちていくかのように彼女はあらゆるものを失っていく。
春希を拠り所にすればするほど泥沼から抜け出せなくなっていく小春。


この√も相変わらず胸が痛かったです。
卒業間近に、積み上げてきたものが音を立て瓦解していく過程はもう言葉にできない。

つくづく間が悪いなぁと思いつつ、雪菜の弟の孝宏という清涼剤に幾許か心が救われました。
孝宏くんガチイケメンでしたわ。
そのくせ報われないとかこれまた泣ける。

ただ、そういった境地でも、
償おうと前を向き、歩き始める展開は胸熱でした。

その背中を押した雪菜。
気丈にも笑顔で春希を見送ったものの、
小春が喫茶店の外から彼女をみたときの泣き顔に全俺が号泣。

このとき、小春を諭すとき。
雪菜は中学の同級生らとカラオケで歌ったと明かす。
歌うことで三年前のあの頃を思い出し、春希を嫌いになってしまう気がして、
ずっと歌えなくなってしまっていた雪菜。

けれどこのときには既に春希との決別をしているため、
嫌いになるつもりで、歌ったんでしょうね。
でも嫌いになれずに泣いてしまう事実に全俺が号泣。


この√小春が可愛過ぎてやばかったです。
そして立ち上がって、向かい合い、償い、
浪人して一年後合格する格好よさも最高でした。

サブヒロインでは小春か麻理さんですわ。

 

風岡麻理√

仕事バリバリで、厳しくも情に厚い、奇麗なお姉さん。
何それ、非の打ちどころないじゃん……。

雪菜の拒絶に打ちひしがれて出版社に逃げ込んで、
二人で売れ残ってた安物ケーキをつつくことから√突入。

この人、可愛過ぎです。
こんな素敵上司いたら惚れざるをえない。

人情に溢れているのがいいですよね。
記事を書いた雑誌の見本誌を必要ないですと断った際の、

「だから、そんなに頑張ったのに…
誰も喜んでくれる人がいないとか…
そんな寂しいこと、言うなよ!」

の台詞なんかは目頭が熱くなりました。

その後の電車での、

「バカにしやがって…っ!!」

でどうしようもなく惹かれてしまう私がいました。


ただこの√に入った際の春希が、
何故か今までになく屑というか、ショボい、へタレ。
甘えたがりの糞野郎に堕ちてしまっていて、
こんな奴に麻理さんはもったいねぇ!! もったいねぇよ!!

ってなりました。
最後は面目躍如の活躍をしますが、
それまでの過程が頂けない。
無性に悔しさが残りますね、これ。

 

小木曽雪菜√

あの拒絶があっても、やはり雪菜以外考えられない春希は、
雪菜に振り向いてもらえるよう向き合う覚悟を決める。

冬馬の気を惹きたくて弾き始めたギターを、
雪菜のために捧げると決める。

歌えなくなってしまった彼女を、
また歌えるように。

夜な夜な電話越しにギターを聴かせたことや、
柳原朋のひたむきな情熱なんかがかみ合って、
バレンタインコンサートは成功し、二人は元の鞘に収まる。


こんな感じだったと思うのですが、
まあ傍から見ててまどろっこしい二人だなぁ、と。

それだけのことが過去にあったのは分かっているし、安易に割り切られても困るんですけど、
それでも、二人とも中途半端さが目立つ気がしました。

雪菜は雪菜で、もっと積極的になるか、あるいは早々に見切りを付けるべきだったと思いますし、
春希も春希で、本気で無視する気なら転部ではなく他大に編入するなり海外に逃げるなりすべき。

けれどそうはせずに、停滞したままでいた。
結局のところ、互いが互いを想い合ってるから踏み込めないし、かといって離れられもしない。
袋小路だったんですよね。

そんな錆ついたままの関係を無理矢理動かそうとしてのクリスマス、
反動であんなことになってしまうのは、ある意味自然だったのかもしれません。

ともあれ、和解に至るまでのひとつの切欠となった柳原朋の存在は、
存外大きかったんだなぁと今更ながら。
全く、いいキャラしてるよ!

まさかicで名前だけ先行していたキャラがこう絡んでくるとは。
よく練られているなぁと改めてまざまざと思い知らされました。

 

 -coda-

ccでの雪菜√の二年後からスタート。
紆余曲折を経て、艱難辛苦をともに乗り越えた先の未来で待っていたものは、
フランス・ストラスブールの地にて起きた、五年振りの、かずさとの再会であった。

雪菜に黙ったままインタビューをし、日本に帰国。
その後、隠したままカメラ片手に密着独占取材。

春希と雪菜の間に生じる不穏な歪み。
反して、春希とかずさの間の溝は徐々に埋まっていく。
またしても二人の間で揺れ動く春希……。

 

かずさノーマル√

思い出の旅館に春希とかずさは逃避行する。
そして、そこで、結婚しようと誓い合う。

しかしながら、かずさは自分のために全てを擲っていく、
壊れていく春希を見続けることが出来なかった。

そんな春希を治してくれるのは雪菜だけだと信じ、
雪菜に春希を返そうと決意する。

決別としての追加公演で、最高の演奏をしたかずさ。
これだけの演奏ができるのだから自分と春希は別々にいたのだとも、
これから先、春希がいなくてもやっていけると言わんばかりとも取れる演奏だった。
そしてかずさは春希の前から姿を消す。

一年後、雪菜の献身的な介護の甲斐もあって、壊れていた春希は少しずつ回復していき、
このまま雪菜とともに歩いていくことを誓う。


この√、とても感慨深かったですね。
逃避行したものの、そのまま逃げてしまうことなく、
春希の幸せだけを考え、戻る選択肢を選び取ったかずさの心中を思うと、胸が痛む。

ただ、この選択肢を選べたのは、かずさが母の病を知らなかったからなんですよね。
拠り所と呼べる、母の曜子と春希の内、春希を失った以上、残すは曜子だけなんですが、
その曜子までもを失ってしまったら、かずさは歩いていけるんだろうかとか、
深く考えれば考えるほど、より、きりきりとしてきます。

かずさはね、一緒に逃げ続けられたらね、
どんだけよかったんでしょうね。

 

かずさトゥルー√

母の曜子の病を知らされ、拠り所を失うかずさを放ってはおけないと、
かずさを護ると決意する春希。
かずさも、雪菜を裏切り、自分を選んで欲しいと告げる。

婚約までしていた雪菜に春希は全てを打ち明け、
職場に辞表を出し、仲間内にも真実を告げる。
雪菜の家族会議にも出席を余儀なくされ、裁きを受ける。

最後に雪菜との決別シーン。
雪菜は三人でいられることを望んでいたが、
小木曽家の一員であることを辞められないことに気付き、別れを受け入れる。

このとき、雪菜は交通事故にあっていたのだが、
余計な心配をさせないためにただ黙っていた。
春希が去った後、耐えきれずに崩れ落ちる雪菜。


全てを捨てた春希は、雪菜に捧げたギターをも残し、
かずさと共にウィーンへと旅立つ。
お見送りは冬馬曜子ただ一人だった。


二年後、かずさの専属マネージャーとして忙しい日々を過ごす中、
社長(冬馬曜子)からのメールに添付されていた動画には、
例のアコギで(明言はされていないが恐らくそうだろう)弾き語りをする雪菜の姿が。

元気ですか? 私は今も歌っています。


いやぁね、作中屈指の疼痛イベントきましたよ、これ。
柳原朋の糾弾も辛いし、依緒の見下げ果てたと言わんばかりの言葉も突き刺さるし、
最後まで庇おうと、力になろうと、説得しようとする武也の優しさが染みるし、
何より小木曽家での弾劾裁判ですよ、孝宏くんの拳がすげぇ痛い。

悪いのがあくまで主人公で、
正しいのが向こう側だからもうままならねぇ!

世界中が敵になっても、私だけはあなたの味方でいる、みたいな言い回しよくありますけど、
実際に周囲の期待を裏切って、とかく責め続けられるこのシチュエーションに遭遇したら、
とても軽はずみには使えない言葉なんだなと思い知らされました。

はっきり言って、職場にも仲間にも恋人にも何も言わず海外逃亡だって、
やろうと思えばできたはずなんです。
それでも、例え逃げるような形であれ、一番好きな、愛している人のために、
周囲の大切な人たちを傷つけつつも最低限の誠意を見せた春希は、
そういった意味合いでは正しかったと私は思っています。

何もかも捨てて終わるお話は何度かお見かけしましたが、
そういった場合こういう切り捨てられる側をしっかり描いてなかったものが大半だった気がします。

全てを捨てるという行為にはこれだけの人を不幸にする道でもあるのだと、
逃げずに示してみせたこの終わらせ方は、正直に言って私的に鳥肌ものでして、
極めて深い感銘を受けました。これは、すごい。

 

雪菜トゥルー√

雪菜は、自身を逃げ道にしようとする春希を許さず、
今一番辛いかずさを支えるようにと、春希を突き放す。
春希はその言葉を背に、かずさを献身的にサポートしようとするが上手くいかない。
それもそのさず、春希は春希で、冬馬の逃げ道になろうとしなかったから。
重ねて、冬馬は母の病状を知ってしまい、更に不安定に。

かずさを助けて、とのメールを受け取った雪菜はすぐに駆けつけてくれ、
春希から託されたバトンを手に、下かずさの元へと向かう。

アンサンブル増刊号のタイアップ企画として、ミニアルバム制作を持ちかける。
これは開桜社、ナイツレコード、冬馬曜子オフィスという、
三人各々のバックを巻き込んだ企画であった。

雪菜の根強い説得により、かずさの頑なだった心も段々とほつれていく。
ビンタの応酬合戦や春希のギター演奏などのあれやこれやが積み重なり、ようやく説得に成功。
タイムリミットの迫る中、追加公演とミニアルバム制作に動き出す。

まるで五年前のあの頃のように。
三人一緒に。

冬馬の思いつきで最後のトラックはオリジナルのポップスに。
春希の詞。
冬馬の曲。
雪菜の歌。

そのミニアルバムの名前は、「WHITE ALBUM」


全てを無事に終え、日本への未練を消化したかずさは日本に残ると決める。
そして、春希を送り出す、雪菜の元へと。

春希と雪菜はお互いの気持ちを曝け出し合って、
ついに、真の意味で、結ばれる。

EDでは二人の結婚式の様子がCGで明かされる(台詞はなし)。


まあこれが、ひとつの正しい着地点なのでしょう。
三人の誰もが負い目を抱きつつ、
それでもみんながそれなりに幸せになっているのだから。

ハッピーエンドとはどう考えても言えそうにないんですけどね。
大団円も、とてもじゃないですけど、使えそうにありません。

なんのかんの言ってかずさが我慢し続けることに変わりはないんでしょうし。
かずさに、春希以外の人が現れる可能性を信じたいものですが……。

ともあれ、かずさ√の、二人以外の他全員が報われないエンドや、
ある意味なし崩し的、妥協とでも呼ぶべきものによって、
雪菜に行きつくエンドよりは救いがありますけども。

でもやはり、一時の間だけでも、
昔のように三人でバカやってる姿を見られたときはすごく快い気持ちに浸れました。

そうそうこれこれ。
これが欲しかったんだよ!
って感じで。

こういった空気を作り出すのが、本当に上手いライターさんだよな、って思います。
勉強になります、真面目に。

 

総評。

傑作でしたね。
時間を忘れてのめっていってしまいました。

先にも書きましたが、
今までずっとマイベストエロゲだった家族計画とタメはれるレベル。
どっちが上で下なのか、甲乙つけ難いです、はい。

なんなんでしょうね、真に迫るとでも言うんでしょうか。
緻密な構成と、巧みな文章が、これでもかとリアリティーを引き上げている。

文句のつけようがないですね。
ふぇえ……(おしっこ洩らす)


ただ、気にかかる点も少しあります。
春希の親の件です。

これだけあらゆる点に解答を示してきたにも関わらず、
この点は濁ったままですよね。
雪菜√でちょっとは拾ってましたけど、それだけ。

ここをどうストーリーに反映させてくるのか気にかかっていただけに、
消化不良感が拭い去れません。
ひとつの重要なポイントだと思っていたのですが、
こと恋愛を描く上で不要と見做されてしまったのでしょうか……。
うーん。

加えて仕方ないとはいえ、五年後の世界は、
サブヒロインの出番が皆無に近いのが残念。

実際社会人になると、相当懇意な関係でもなければ、
同期とか後輩と縁遠くなるのはごくごく自然だし、
麻理さんは海外だし、致し方ないっちゃ、致し方なしなのかなぁ。

 

最後に。

キャラクターに関して。


大抵こういったゲームをやっていると、贔屓にしたくなるキャラが出てくると思います。
萌えとか、そんな感じの言葉で言い表されることの多いマイフェイバリットキャラ。

ただ今回は、この娘がいちばんっ!
みたいのに、いまいちピンと来ませんで。

どのキャラクターも同様に愛らしいというか。
みなそれぞれに魅力的で、もう選ぶのが困難過ぎます。
かずさ派、雪菜派なんて、実に対立を生みやすい造りのゲームの癖に……。

√の完成度もどれもが行き着きかねない可能性のある着地点であって、
サブヒロインの√を、単なるifシナリオと切って捨てるのに抵抗があります。

かずさと雪菜だったらうーん、どっちなんだろうなぁ。
高校時代の不器用に格好つけてて、実際格好いいかずさが一番好きなんですけど、
五年後の未成熟なままのかずさは妙に苦手で。

雪菜は雪菜で、したたかで計算高いところがちょっと気にかかる。
けどあざとかわいくもある。
選べない。

なんだかんだ、小春が一番好きかもしれんね。
ロリコンという汚名を被ってでも好きなもんは好きなんだふっひゃー。
春希のために一年棒に振って下さいオナシャッス!!



そんで、春希について。

クズ主人公とかなんか散々呼ばれてますけど、
個人的には比較的好意的な感触の主人公です。

仰る通り、重要な場面で平気で嘘を吐いたり、隠し事もする彼です。
これと定められず、ずるずる女の間を行き交ったりもします。
卑怯やらクズやら言われても、まあしょうがないのでしょう。

ネットの感想を漁っても社会人にあるまじき立ち振る舞いみたいに書かれていたりする。
けれど私は、私自身が人間として成熟していないからでしょうか、
結構リアルに感じられ、いやいや、人間って大人になろうがこんなもんでしょって思うのです。

そんなにもみなさん公明正大なんですかね。
つっつかれて、埃ひとつたたないまっさらで奇麗な体なんですかね。
残念ながら私は、そんなことは嘘でも言えないような人物だし、
ときに自身の欲望に屈し、それを優先してしまうであろう駄目人間な気がします。

依緒の、春希の浮気は浮気じゃないんだよみたいな台詞が的を射ているなと思いました。
単なる浮気だったら、クズ呼ばわりもやむなし。
平気で二股かけて、悪びれる様子もないようなのが見下げたクズ野郎ではないでしょうか。

迷って苦しんで、そういった関係に至った春希。
浮気といえば浮気なんですけど、それでも最低限の誠実さを、どの局面で保っていたと思うのです。
そういった憎み切れない人物である彼は心底人間くさくて、やっぱリアルだわなと思いました。

全面的に肯定する訳でもないし、同情もしないけど、
だからと言って、一方的に非難するのもなんか違う。
それが私なりの解答です。

私が男だからこういうところに落ち着くのかもしれません。
女性の方のホワルバ2の感想聞いてみたいなぁ。

あと、このゲームをやっていて、大学の後輩と話したことを思い出したりしました。
これとは全く関係ないマンガで、主人公が彼女に別れを告げて別の女性と恋仲になる話のヤツ。

私「あの展開がどうにもねー」
後輩「そうですか、僕は新しく好きな子が出来たら別れてそっちに行きますけどね」
私「そうか……」

みたいな話をしました、確か。
後輩君は覚えていないかも知れませんが。
それに細部が違うかもしれないし、二年以上前だからあんまり自信ないです。

でも実際、自分だったらどうなんだろうって、
あの日からずっと、時折考え続けてきたんです。

今付き合っている彼女がいて、でも本当に好きになってしまった女性がいたらどうするか。
勿論付き合う彼女も好きでただ一番じゃないってだけ。
けれど一番でもないのに付き合っていること自体不誠実なのか、とか。

結局、そういった立場になったことがないので、結論は出ないままなんですが、
ケースバイケースなんじゃないかなぁというのが本音。
これが正解ってものばかりが、この世の中溢れている訳でもないですしねぇ。



後書き

だらだら蛇足まで書いてしまい申し訳ございませんでしたが、
一先ずここらでWHITE ALBUM2の感想を終えさせて頂こうかと思います。

長々と書いたはいいものの、纏まりもないし、かなり自己嫌悪。
読み返してる内に勝手に赤を入れ手直しするかもしれませんが、ご容赦下さい。

これだけ重厚な作品に触れてしまうと、
どうしても浮かび上がる感情がひとつやふたつじゃ済まなくて、言葉の選定が難しいんですよね。
こっちのほうがいいんじゃないかみたいなのもありますし、
時間を置いてみたら違う解釈が生まれてくることもありそうですし。

ただ、一応感想として書き終えられたので、
ようやく一区切り付けそうです。
最終プレイから一週間以上経ってて、思えば今月はホワルバ2一色でした。あはは。

そんでもってVita買ってVita版やろうか悩み中です。
まあそこんところは今後次第ですが。

そんな感じでお付き合いありがとうございました。
よろしければ、今後も引き続き感想等お付き合い下さると嬉しいです。

それではでは。





※追記

ご意見ご感想等々ございましたら、コメントやtwitter辺りで返して下さるとすごく嬉しいです。
毎回こんな感じのを最後に添えているのですが、全く以て反響ゼロでしてむっちゃ悲しいので、
今回は正直に、構ってちゃんでいこうと思います。

なんでもいいので、万が一にでも思いついたことがあればお教え下さい。
より考察を深められたらお互い有意義でしょうしね。
加えて、今後の参考にさせて頂きますので。

それでは今度こそ本当にさようなら。



 
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