久方振りにエロゲーをプレイしました。
その前にやったエロゲがなんなのか、いつだったのかさえ、最早思い出せません。
発売日に秋葉原のソフマップに行くことも、
インスコする時間すら惜しいと齧りつくようにPCを睨みつけていた日々はいずこへ。
そんなエロゲ難民と化した私が、
今更何故このゲームをプレイするに至ったのかについては、
聞くも涙語るも涙の物語が紡がれてしまうということは特になく、
単にご縁があったからという他なく、
とにもかくにも夏季休暇期間にプレイをし、端から端までクリアいたしました。
本当は発売日に入手していたのですが、
そこは社会人の悲しき性。
言い訳がましいことは重々承知ですが、
時間、時間が……。
この前の休日なんてカーシェアでレンタルして、
前泊してまでゴルフコンペですよ。
30℃を優々と超える炎天下の中、
ゴルフクラブを振り回すことで折角の休日が終わるとか虚しくなりません?
……失敬、つい、本音が。
そんな艱難辛苦を乗り越えて辿り着いた長期休暇。
誰に邪魔されることもなく心置きなくプレイできる環境を手にし、
ようやくプレイするところまで漕ぎつけ、二日がかりでクリアしたのです。
その軌跡を、きちんと残しておきたいと思うのはごくごく自然な感情ではないだろうか(反語)。
てなわけでグダグダな前置きはさておきまして、
感想をしたためていきたいと思います。
ストーリーとしては、大きくざっくり2部構成となっております。。
前半は大道芸大会(ライヴ)に参加するための仲間集めと練習、そして本番。
後半は大会で好成績を収めた結果、本大会に召集されることとなり、
寝台列車で会場へ向かい、本大会に臨むまでのお話です。
前半部は、共通√となっており、後半部は個別√です。
それぞれの√について触れていきたいと思います。
【共通√】
この手の美少女ゲームではお馴染みのボーイミーツガールです。
主人公は才能ある魔法使いだったものの、
過去に色々とあって、その道へ進むのを諦めた青年でした。
しかしながら、とある出会いから、ある一人の少女に魔法を教えることになり、
少しずつ何かを取り戻していくお話といったところです。
テキストのテンポはよく、読み手への配慮を感じました。
平易な文体で読みやすく、とくに違和感もなくとても自然です。
少しでも引っかかってしまうと世界観に溶け込めなくなってしまうので、
やはり重要なポイントだと思います。
ストーリーとしても、
みんなで一丸となってひとつのことを成し遂げるというのは、
王道でありつつも、ちゃんと面白かったと思います。
ただ、気にかかるところがなかったと言えば、嘘になるため、
その点については総評で触れたいと思います。
次に各√というか各キャラについてですかね。
クリアした順でいきます。
ここから下はネタバレになるので、
そういうの嫌な方は退避してくださいね。
自己責任でお願いします。
【ルー√】
天真爛漫だけれどもどこかズレたところもある、
若干舌足らずな喋り方をする女の子。
↓の動画をクリックすると声が聴けますよ。
この、はっきり聞こえるのに、
若干舌足らず感の残る喋り方できる声優さんすごくないですか?
SUGOI!
シナリオとしては、恐らくは軽めの発達障害的側面と、
孤児であったことからの、本当の家族ではないという負い目などの問題が、
寝台列車の中で立ち上がってきます。
自身に自信がないのは仕方ない生い立ちなのかなとは思うのですが、
あまりに塞ぎがちというか、大会参加を誘ったときのように、
もっと深く考えず頼れる形でもよかったのではないかと思います。
全体的に重い空気が横たわり、楽しくないですし、
その空気の中、7泊8日の大半を過ごすのは、
周りにとってもいい迷惑のような気がするんですよね。
家族との問題もあまり解消しないまま不完全燃焼な形で終わってしまったのが残念です。
【ペチカ√】
ちびっこい演劇部の先輩。
なんだかんだ面倒見がいい先輩キャラは嫌いじゃないんですが、
なんでこんな口が悪い喋り方なのかよくわかりません。
自分の中では女子高生の無駄づかいのロリが頭に浮かびました。
個別√エレナさんとの確執を解消するお話。
些細なことですれ違って仲違いってのは現実でもよくあることではあるのですが、
そんなに仲がよかったなら、もっと話し合えたと思いますし、
ここまで拗れることってあるのかなと思いました。
お互いがお互いを思い合っているんだから、
そうそう悪くはならないと思ってしまうのですがね。
守りたい、この笑顔。
また、服飾関係のことが妙に手馴れていて、
やりがい的なものを見つかって、そっちの道に歩むことでこの√は終わりを迎えます。
共通√でもそうだったんですが、一回の演劇部員が仕上げられる衣装のレベルを超えていて、
そこに対する説明が薄かったので、こうなることが早い段階で読めていても、納得はいかなかったです。
キャラはいいんですけどね、キャラは。
【クラリス√】
一流のバレリーナになるべくストイックに研鑽を積み続ける10年に一人の逸材だが、
男性恐怖症のため、男性コーチと上手く付き合えておらず、不調といったキャラ。
主人公とやりとりしていく中で、男性恐怖症が薄れていき、惹かれていく。
他の子が好きなんじゃないかとやきもち焼いたり、うわの空で演技して失敗してしまったり。
彼女が作中で恋愛的要素を一番担ってくれていたかもしれません。
銀髪スキーに刺さるキャラデザだと思います。
なんのかんので支え合ってめでたしめでたしです。
【カーレンティア√】
世界でいちばんNGな恋 ネタバレあり感想でも述べていますが、
私は金髪お嬢キャラに滅茶苦茶弱いんだよ。
それだけでも致命傷なのに、声が澤田なつさんだよ。
サクラノ詩の 夏目 藍 先生最高でした。
無理無理無理ゲームセットです。
コールド負けです。
澤田なつさんの台詞の理解度が凄まじくて、驚きます。
台詞の字面だけでなぞっているだけでは絶対に出てこない声が、
シーンとキャラの絵にはぴたりと合わさるんですよ。
こればかりはプレイしていただかないと伝わらないと思いますが、
プレイした方は「わかる……」っていってくださるんじゃないでしょうか。
この作品、ボイス面に関しては文句のつけようがないのですが、
その中でもダントツで素晴らしいのが、カーレンティアですね。
満点花丸です。
シナリオに関しては、名家におけるしがらみだとか、
そういうものが立ちはだかります。
ただ、基本的には会話が主体で、最終的にはカーレンティアさんの才能で黙らせるって感じなので、
折角の山場がそれでいいのかな、とは思ってしまう。
そもそも共通√で、
主人公はカ―レンティアさんの気持ちを裏切ってしまう一幕があり、
なんのかんので仲直りしますけど、
カ―レンティアさんの根源に踏み込んで地雷を爆発させてしまった手前、
本来ああもすんなりわだかまりがなくなるとは考えにくく、
まして恋仲になるのかが疑問です。
カ―レンティアさんが惚れる要素が薄い気がしますね。
【ソフィア√】
メインヒロイン扱いと言っていいのでしょう。
他のヒロインより個別√の尺も長く、えっちなシーンが他キャラより多く優遇されています。
過去は引きこもりだったと明かされます。
変わるきっかけを与えてくれた魔法も、主人公も大切にしたいけれど、
魔法の道に歩むことは、主人公を魔法使いの世界に引き戻すことに繋がりかねず、
何のために頑張っていたのかがわからなくなり、引きこもりを再発。
それでも何のために頑張るのか、
どうして魔法使いになるのか。
その命題と向き合って、彼女は歩み始める、みたいな終わり方。
引きこもりの描写、
鬱っぽい感じは違和感なく描写されていたと思います。
ただ、個人的には「自分にはなんにもない」って思う人の親が、
パン屋で自営業してるってのはあんまりしっくりこなかったです。
サラリーマン家庭で育ったほうが、
そういう気持ちに説得力が出るんじゃないかと。
正に私がそういう家庭で育ったから、
そう思うだけなのかもしれませんが。
パン屋自体に不満はないみたいですし、
お手伝いにもそれなりにしているようで、
それでなんにもないってのはどうなんでしょうね。
【ミヤビ√】
おまけ隠し要素ですね。
語れることは殆どないのですが、
ラーシャの言葉を話すときは口調のガラが滅茶苦茶悪くなるのは、
意表をつかれましたし、面白かったです。
面白かったし可愛かったんですけど、
ただ、最後ぐらいはまともに話せるようにしてあげて欲しかったですね。
また、折角の「和」なキャラなので、
もっと大和言葉というか、古めかしい言葉を使って欲しかったですね。
これは私の好みでしかないのですが、
「口づけ」ではなく「接吻」とか、
「抱いてください」より、「夜伽」とか「契る」とかね。
そういうワードをこういう着物キャラには言ってもらいたいんですよ!
わかりますかっ!!
わかりますよねっ!!
【総評】
雰囲気はいい。テンポもいい。キャラもいい。
でも深みはない。
口あたりはいいけれど、残るものが殆どなく、ひっかからない、と感じました。
全体的によくも悪くも軽い、浅い印象がありました。
例えば、100年に1人とまで謳われるヴァイオリンの才を持つ、
カーレンティア・ヴェリーベルを仲間に勧誘するイベントがありますが、
話を持ちかけたら即OKが出てしまうのは拍子抜けしてしまいましたし、
作曲を殆ど経験していないらしいのに、
やってみたらなんか上手いことできちゃいましたみたいなのはちょっとどうなのでしょうか。
天才という言葉で片付けられ過ぎてはいませんか。
そもそも、何がどう天才なのか、
作品を通してもあまり伝わってこない部分がありました。
粗い言葉で申し訳ないですが、単に上手いだけの人なら恐らくごまんといて、
曲がりなりにも100年に一度と呼ばれるからには、相応の何かがあって欲しいと思います。
他にも、ジャンが便利キャラ過ぎるところとか。
かなり都合の良いキャラと言いますか、
ジェバンニが一晩でやってくれましたに通ずるものがあります。
寸劇の脚本をそれとなくぱぱっと仕上げてしまう辺りなんかは特にそうです。
ヤポン(作中における日本のような国)の神話(天岩戸神話)から着想を得るのはいいのですが、
それはヤポンで育った、ヤポンとのハーフの主人公の役目ではないんですかね。
主人公とジャンで二人で練り上げていくとかならまだしも、任せっきりですし。
何より、かなりの面倒事を引き受けてくれるジャンが出てるCGが一切ない。
報われないにもほどがある。
本人自体はそういったことは気にしない性格なのかもしれませんが、
成果に見合った報酬がぜんぜんないってのはいかがなものか。
見返りを求めないことこそが友情なのだとしても、です。
魔法使いについても、よくわかりません。
魔法使いがどれだけのことができて、その中でも主人公がどれだけすごいのかとか。
そもそも、ひとりの人間が何もないところから、
あんな熱や光を生み出すとしたら怖くないですかね?
登録とか許可とか法的に手続きが必要なレベルで、
個々人の判断でどうこうしていいレベルを超えているような気さえします。
というか、魔法使いがただのショービジネスで終わってるって勿体なくないですか?
「ユニゾン現象」とやらも、
専門機関とかではなく一回の医師が第一人者ってどうなんでしょう。
もっと世界規模で解明しなきゃいけないことがたくさんあるのでは、とか。
加えて言うのであれば、主人公と親の確執も解消されていません。
ヒロインの過去だけ乗り越えさせて、
おいおい自分はどうなんだ、ってなってしまうのが気にかかります。
姉の存在もちょろっと出てきただけなので、
ここはどうにかしていただかないと不完全燃焼感があります。
また、個別√に進んでも立ち表れるのは、
少女たちの抱える過去や問題であって、
なんというか、二人で何かを成していった先の障害というよりは、
主人公ではない人と結ばれることがあってもぶつかっていたことが大半というか、
「彼でなければ起きえなかった」、
「彼とじゃなきゃ乗り越えなれなかった」といった要素が希薄だったように思います。
そういった気になったことを論おうとすれば、
もっともっとあるのですが、
ひとまずはここまでにしておきましょう。
このように、この作品は表面は綺麗なようでいて、
その実、掘り下げが薄いため、心に食い込んでこないのです。
勿体ない、と思います。
ただ、これがシナリオライターの判断なのか、
制作会社の考えなのかは、わかりません。
私個人は、気持ち悪いくらい踏み込んで、作り込んでいる作品が好きなのですが、
必ずしもそれがウケるとは言えませんし、
敢えてキャラゲーに特化し、
細かいことはいいんだよ、わかりやすく可愛くてエモくて萌えられれば!
というスタンスなのかもしれません。
そしてそういったもののほうが、実際売れるのかもしれません。
私は業界の人間ではないので、自分の嗜好でしか語れませんが、
個人的には、もっともっと踏み込んで尖った作品にして欲しかったなと、そう思います。
キャラクターはとても魅力的だっただけに、だからこそ惜しいと思います。
点数を付けるのであれば、
65〜70点。
この辺りではないでしょうか。
最後にとてもよかったところをひとつ。
ソフィア√でのクラリスと、
同じくソフィア√のペチカ。
このあたりの台詞には、彼女たちが自身の人生を歩んで、
そこから生まれた経験として出てきた言葉で話していると感じさせる説得力がありました。
そういったものを、「キャラクターの息遣いが聞こえてくる台詞」と私は呼んでいるのですが、
それがこの作品にもちゃんとありました。
これはとても素敵なことで、いいことです。
こういったエピソードがもっともっと、
特にモブキャラとかからも聞こえてくると、深みが増すと思うんですよね。
蛇足ですが、思ったことは取り敢えず言いたい質なので……、
個人的には魔法がテーマのひとつにあったので、
十数年前にプレイした「はぴねす!」が思い返されました。
懐かしいですね。
大会までなんだかんだみんなと頑張るのは、
「サクラノ詩」の「櫻達の足跡」とか。
そんなこんなで感想でした。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
月姫のリメイクをぽちったので、
そのプレイと感想をいつかあげるかもしれません。
あがったらよろしくお願いします。
それではでは。
ランス10 感想
※デカい画像をバカバカ貼ったので重くなっています。
※ごめんなさい。
※あまりに酷いようなら修正する日が来るかもしれません。
■前置き
どんな感想を書くべきなのか、悩みますね。
ただ、真っ先に一言。
最高でした。
それだけは、間違いございません。
これまでのランスシリーズで私がプレイしていたのは、
鬼畜王ランス、ランス6、戦国ランス、ランス9です。
中途半端ですよね……。
そんな私が書いた感想なので、間違って受け止めていたり、
理解している箇所があるかもしれませんが、そのときは何卒ご教示願えたらと存じます。
ともあれ、ランス01,02,03と5D,クエストとマグナムは積みっぱなしなので、
いいかげん、折を見てプレイしたいと思います。
私をランスシリーズに誘ったのは、戦国ランスでした。
例に倣って、今は亡きパソコンパラダイスで得た情報に釘付けになったのです。
受験では世界史を選択したものの、戦国時代の武将の話はまあ人並みに好きでしたから
だって、徳川家康が本当に狸なんですよ。
四国が死国だったり。
これらのビジュアルに惹かれたのと、 あとはランス世界の設定というか世界観ですね。
才能限界のシステムだとか、魔王、勇者、魔人などなどなど。
ここら辺は公式ホームページに大変細かく解説されているので、
是非とも見てみてください。
わくわくしませんか?
エロ抜きのランスが成り立たないとわかっていて尚、
日陰でひっそり存在していることが勿体なく思えてしまうほど。
興味が持てたら、やってみて欲しいです。
導入としても戦国ランスは優秀だと思いますので、オススメですよ。
というかランス10から入って全く問題ないですけどね。
かなり丁寧に過去の解説を盛り込んでくれているので。
そんなこんなで、私は他にも鬼畜王やったりなんだりして
深みにハマったのでした。
そしてこの度、シリーズ最終章のランス10を発売日にゲットし、
約二カ月もの月日をかけて、一応最後までプレイすることができました。
めでたしめでたし。
▶目次にもどる
■戦闘システムについて
私は全然やらんのでなんとも言えんのですが、
俗にいう、スマホゲーのような、カード収集と育成をメインとしております。
バトル画面は↓のような感じ。
確定キャラの入手イベントはあれど、
結構運要素というか、引き要素も攻略上、重要になってきます。
最初はなんのこっちゃって感じで、
チュートリアルっぽいのが始まってもなんとなくしかわかりません。
習うより慣れろって感じです。
数ターン(1ターンがとてつもなく長いぞ!)こなしていく内に、段々とコツが掴めてきて、
どんなキャラが強いのか、どう進めていけばよいのかが、自ずと見えてきます。
単調そうに思えて、その実、奥深い。
こいつは面白いですよ。
■難易度について
公式が掲げているように、難易度は高く、かなり厳しめです。
よっぽど上手い人じゃないと初見で王道クリア(クリアA√)は出来ないんじゃないでしょうか。
私は当然、ナチュラルにバッドエンド直行でしたもん。
それもそのはず、このゲームは周回クリアを前提としており、
バッドエンドを積み重ね、周回ポイント(その分、有利に進められるボーナスが付与できる)を蓄積し、
「強くてニューゲーム」を行うことで、正規√クリアを目指す構造となっています。
カードの引継ぎはできないのが、なかなかに口惜しいのですが、
だからこそ、一筋縄ではいかず、絶妙なバランスに仕上がっているように感じます。
第1部の最難関はやはり大規模侵攻でしょう。
2枚抜きを多く成した上で、【大規模作戦準備中】のイベント制圧が必須。
個人的にはリーザスの2枚抜きが難所でした。
シルキィさん堅過ぎんよ〜。
上杉謙信でバフかけて、ポロンの装甲破壊パンチで支援消してからの叩き込み。
ターン制限系は大抵キツかったですね。
全体通してよく頼っていたキャラは、
香姫、剣豪、ホーネット、ケッセルリンク(女)、
AP0攻撃勢(リック・ガンジー・ロレックス等々)です。
定石でしょうね。
■ストーリーについて
はい、ここまでは正直、当たり障りのないコメントを並べてきましたが、
ここからはストーリーに言及しますので、
未プレイ者及び、未クリア者はブラウザバックを所望します。
戻ってください!
絶対に戻ってください!
はい。それでは本筋に触れましょう。
第2部の存在について。
クリアA√は複数ございますが、その過程で諸条件を満たすと、
第2部がプレイできるようになります。
第1部全体を10とするなら、1〜2くらいの体感ボリュームです。
第1部のクリアA√では、あらゆる不幸が折り重なった結果、
シィルは亡き者となり、ランスは魔王になります。
年号がリトルプリンセスのLPから、
ランスのRAと時代が移り変わりました。
第2部のスタートはいきなり15年後から。
ランスの娘、長女リセットの独白から簡単に現状が明かされた後、
この15年に起きた出来事が年表といった形で、
冒頭にずらずらと並べられます。
これってありなん?
新事実が突然ボカボカ頭を殴り続けてくる。
あまりの衝撃に、私は打ちのめされました。
ご存知のとおり内容が、かなりシリアスでしたので。
加えて、個人的にはこういった事実がありましたよとただ示すのではなく、
体験させて欲しかったなと思いました。
この15年をもっと見せて欲しかったのです。
魔王ランス側の視点と、人類側の視点で。
それだけ、ランスのいる世界やキャラクターが、とてもとても魅力的だから。
彼らの苦悩、生き様を、もっと見届けたかった。
もしかすると、その辺りを補強するお話がこの先、現れてくれるかもしれません。
そうだと嬉しいですね。
期待せず、待ってみたいと思います。
さてさて、そんな第2部の主人公はエール・モフス(「エール」は変更可)です。
エールは、法王クルックーとランスの間に生まれた子です。
最初は男パターン2種類の内から片方を選択する仕様ですが、
1度クリアすると女パターン2種類も選択でき、
女キャラを選択すると、作中で若干話が変わってきたりします。
裸族王バファムーンの全裸結界のシーン(←文章にしてるとひっどいな 笑)や、
最終決戦前に訪れる、にぽぽ温泉街の温泉宿での入浴シーン(女子風呂CG有り)が、
わかりやすい変更部分でしょうか。
他にもちょこちょこ変わっていて、整合性を保っています。
男湯↓
(↑女湯 右端のスシヌかわいいですよね。眼鏡ないほうが……)
エールは母親のクルックーに嗾けられ、旅をします。
大きな目的は、5つのオーブを集めること、魔王の子と呼ばれる仲間を集めること、
そして魔王ランスを倒すこと。
おお、王道RPGっぽい。
冒頭のシーンはドラクエIIIのリスペクトだという意見を見かけました。
誕生日が旅立ちの日ですし、 何より『ひのきの棒』と『冒険者の服』を渡されますからね。
そりゃあ、そうだ。
あと、オーブ集めもかな。
ってなわけで仲間を集めて旅を続けて、魔王ランスを倒すのですが、
何故、「魔王の子」を集めるのかが、旅の途中で明かされます。
身内のゴタゴタは身内で片付ける、という簡単な話ではなく、
そこにはちゃんと理由がありました。
ランスに才能限界がない(∞)ように、
「魔王の子」は同様に、才能限界がなく、際限なく、強くなれるからです。
つまり、魔王に勝てるとすれば、「魔王の子」であり、
「魔王の子」は、人類の希望そのものなのです。
当然、エールもその内の一人です。
ただ、この「魔王の子」はかなり際どい存在でもあり、
ランスが魔王化し、人類に甚大な被害をもたらした結果、
その子供らを危険視する勢力が現れたのです。
今はよくても、いつかは人類を裏切って魔王(親)側につくのではないかという危惧、
そうでなくても、才能限界のない強大な力(バランスブレイカー)は、 存在するという、
ただその一点だけでも、大きな意味があり、
それを排除しようとする思想が生まれることは、自然なことなのでしょう。
この辺りを読み進めていて思い浮かんだのは、「 スパイラル 〜推理の絆〜」です。
お前、なんでもかんでもスパイラルに結びつけるんじゃねーよ! と、
私のブログをよく読まれる方は思うのかもしれません(そんな人いるかしら?)。
ですが、まあ、思ってしまったものは仕方ないですよね。
スパイラルを読んだことがなくスパイラルのネタバレを喰らいたくない方は、
反転部分をすっ飛ばしてください。
【追記】
「魔王の子」の才能限界がない設定はマグナムで示されたことや、
鬼畜王では「魔王の子」が3人までのことから、こじつけが過ぎる、という意見を頂きました。
ご意見は大変貴重ですので、私も真摯にその意見に対し向き合いたいと考えます。
まず、私はパクっているといっているのではなく、
影響を受けた可能性を申し上げているに過ぎず、何から何まで似通うとは思っていません。
構図が似ていると申し上げているのです。
「創造神」と「造物主」、「魔王や魔人の無敵結界」と「神と悪魔は例外を除いて殺せない」
ここまできたら、そんな特殊な人物の子や血筋が「特別」である可能性に触れるのは、
そんなに不自然なのでしょうか、そこが合致するのを、時系列を理由に否定するのは弱い気がします。
また、反対に、「魔王の子」の設定が「スパイラル」の影響を受けていたとしても、
不思議はありません。かなり売れたらしいですし、有名な作品ですからね。
それでも、こじつけに思われたり難癖に思われたり、考え過ぎ、なのかもしれません。
これについてははっきり言って確かめようがないですし、
単純に符合が多かったそれだけなのかもしれません。
ただ、「構図が似ている」という事実は間違いないので、一意見として残したいと思います。
【追記終わり】
さて、そんなこんなで旅の果てに、
魔王ランスと対峙するのですが、勝てない。
けれどクルックーには秘策があった。
リトルプリンセスに氷漬けされたままのシィルの氷像を魔王の眼前に用意し、
魔王の力で溶かせるという秘策が。
上手いことリセットビンタがヒットし、
魔王ランスを正気に戻し、氷像を溶かせることに成功。
もう大丈夫
って、めっちゃいいシーンなんですけど、
戦国ランスで氷像にされたはずだから、 シィルは裸じゃなくて和服のはずでは……?
あれ?
あれれ?
おかしいぞ???
※と、思ったのですがこの記事を読んでくださった方から、
「マグナムやっていれば凍ったシィルが裸な件は分かるのと、クルックーへの理解も変わります」
とご指摘を頂きました。ありがとうございました。
理由がちゃんとあるようです。大変失礼致しました。
プレイしたいと思います。
クルックーへの理解が変わる、というのも気になりますしね。
話を戻します。
バードにやられたシィルの体は(↓これ)、
実はIPボディ+シィルの魂だったと判明。
5ターン目の頭で、毎回シィルの魂が抜け出るイベントが起きますよね(↓)。
何回も周回してるとうざってーなー。
なんのためにあるんだよ、これ?
とか思っていたのですが、この辺りは伏線というか、
前振り、だったんですねぇ。
それでも、なくてもいい気がしますけど。
閑話休題。
その後は魔王と魔王の子の会談。
クエルプランの襲撃、討伐。
魔王システムの破綻。
仲間との別れ。
実家への帰宅。
最後の最後。
エールは創造神ルドラサウムの化身だったと種明かし。
答えならばもう聞いた。
『楽しかった』と。
「あなたは」なんて意味深長な、二人称小説のような体裁を整えていたのは、
今までのランスの物語のように、ランスの傍にいるような、
ランスと一緒に冒険しているような形式とは一線を引いて、
プレイヤー自身が冒険をしているような、没入感を高める仕組みだと思いつつ、
それだけにしては、三人称からわざわざ切り替える理由には弱いわな……、
なんてことを思っていたのですが、
まさかこんな叙述トリックが仕込んであったとは思いませんでした。
その伏線は、しっかり織り込まれていたのです。
神異変が起きたにもかかわらず新しい神魔法を呪文書を見ただけで習得できること、
勇者ゲイマルクを成仏させられたこと、だとかでしょうか。
創造神だからぶっちゃけなんでもありなんですよね。
魔剣カオスが持てたり、聖刀日光と契約してなくても扱えたり。
なんでだろうと疑問には思っても、
まさかルドラサウムそのものだとは思い至りませんでした。
これは素晴らしい落としどころだったと思います。
鬼畜王ランスにおけるルドラサウムエンドも上手いなぁと感心したものですが、
今回も同じネタというわけにはいかないだろうし、どうするんだろうと思っていただけに、
ここは、本当によかったと思います。
あとは、ちゃんとランスにとってシィルが特別であることを、
きちんと貫いて、一貫性があって終わったのもよかったですねぇ。
やはり、あのシーンは名シーンです。
それと、なんで志津香とナギまで才能限界なくなってるん?
と不思議に思っていたのですが、
「親友は志津香&ナギ」√でその謎は明かされております。
もうめんどいから画像を貼り付ける!
そういうことね!って感じです。
このシーンは、心がほんわかする、いいエピソードでした。
さてさて、それなりにあれこれ申し上げてきましたが、
総括してみますと、第2部のストーリー自体に不満はないのですが、
第1部に比べるとやはり駆け足感が強いですし、
一方通行的で、戦闘も単純作業化してしまっているのは残念でした。
もっと枠を広げて、自由度があったほうが、
ルドラサウムに「冒険」を伝えられたのではないかなと思うんですよね。
クルックーがオーブを隠していたというのも、
どこかスタンプラリー的というか、
敷かれたレールの上を走っている感が拭えないじゃないですか。
ボリュームがあれだけあって、それ以上を求めるのは酷というものなのかもしれません。
それでも、そこまで突き詰めてもらえたら、 文句なしだったのかなと、個人的には思います。
■まとめ・好きなキャラ
素晴らしい大団円でしたね!
私ハッピーエンド好きとしては、これ以上ないってくらいの着地点。
ゲームバランスいい、ストーリーいい、キャラいい。
どれもが最高。
鬼畜王ランス、戦国ランス並。
時間を忘れてプレイしてしまいましたもの。
百点満点の花丸です。
強いて言えば、シリーズ最終章と銘打っているだけはあり、
敷居が高い印象を持たれそうな懸念がありますね。
実際は世界観や過去の歴史についての解説がこれでもかってほど充実してるので、
ここから飛び込んでもらって全然いい造りになっているのですが、
それが上手く伝えられるかどうか……。うーん。
とにかくいいゲームでした!
素晴らしい作品を生み出してくれたことに、最上級の感謝を。
ありがとうございました!!
最後に好きなキャラ(特にキャラデザ)を幾つか挙げます。
全体的に好きなキャラが多過ぎるので、ほどほどに今思いついたのだけ。
取り敢えず、今回一番ツボったキャラデザは魔人リズナさん。
エロかわいい。
衣装最高過ぎる。
人気投票は魔人リズナで入れてきましたよ、私。
その次、クエルプラン様。
神々しい。
束の間の人間バージョンもいい。
人間バージョンの胸元にあるのは、
ブローチじゃなくて懐中時計かな。なんかそれっぽいデザイン。
はいこちら複製の色紙でございます。
クエルプランかわいい。
ついでにキャンバスアートと一緒に。
手前がエロゲ箱なので、デカさがよく分かりますね。
色んな絵柄があったんですが、 お値段と部屋のスペースの都合上、1個が限界だなと思い、
悩んだ末、これにしました。
ランス10のパッケージ絵、大集合って感じで好きなので、
いい選択だったと思います。
魔人ホーネットさん。
美人さんですね。
最初はそっけないけれど、人間への理解を深めるにつれ、
認めるべきところは認めてくれるように変化するのがポイント高いです。
あと強い。
魔人シルキィさん。
第2部でずっと手を振ってくれるところとか、
英雄時代のエピソードが琴線に触れます。
キャラデザもいい。
魔人ワーグさん。
かわえー(思考停止)。
ウルザさん。
戦国時代からずっと好きでした。
CG拾うために久し振りに戦国やってみたら、
ウルザさんのステータスかなり高めてて笑います。
第2部ナギさん。
あの子があんなふうになるなんて。
いやぁね、鬼畜王だとかランス6だとかランス9思い出すと、
よかったなって。心の底から思えますよ。
リセットさん。
姿が変わんないのちょっと可哀想かな。
かわいいけどね。
乱義。
戦国ランスのIFシナリオの五十六√の最後、
乱義くんが出てくるわけですよ。
十年くらい前にプレイした彼が、
青年の姿で現れる。
3Gじゃないけども、感無量ですたい。
いい男になったなぁ。
香ちゃん。
第1部の獅子奮迅の活躍はさておき、
美人さんになるのは確定でしたが、
まあ立派になって。
戦国ランス正史√の終わりを読み直したら、
あんなちっこい子が、本当に立派になってねぇ……。
っていうかもう本当、月日の流れを感じるっていうか……。
あの頃の私、
学生だったんだよね……。
……。
ノア・ハコブネさん。
あたい、金髪に弱過ぎる……。
ヌーク77さんこと、ダークランスの嫁さん。
キャラデザ半端ないし、
元天使なのに気取ったところがないのも素敵。
悪魔と堕天使。いいコンビです。
ダークランスさん。
理想的なお兄さんになって微笑ましー。
こんなお兄さんが欲しかった。
第2部になって一番株を上げたのは彼ではないでしょうか。
強いし、優しいし。
ここまでやって、大分疲れたのでこの辺で勘弁してください。
画像加工する気力がなかったよ。
バカ重いページになってしまいました。
ごめんなさい。
あまりに支障を来たすようなら、修正します。
思いの丈が書き切れていない気がするので、
読み直して、そのうち赤を入れると思います。
たぶん。
最後の最後に、こんなところまでお付き合いくださり、
誠に、ありがとうございました。
自堕落ブログで恐縮ですが、
今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。
世界でいちばんNGな恋 ネタバレあり感想
ネタバレなしの感想はコチラです。
プレイを終えてから大分間が空いてしまいました。
これは単純に私生活で色々と無理が重なってしまった結果です。
なんとかして時間を設けようとするものの、
そこまでいったら体調崩して寝込んでまた仕事みたいな日々。
時間が経てば経つほどに記憶は曖昧にぼやけていく。
このままではいけない。
肉付けは後回しにしても、できるところまでアウトプットしようと思い立ち、
キーボードをカタカタさせています。
取り敢えず、各√毎に言及していきましょうか。
夏夜√
通称、2号ちゃん。
自分は二番目でいいからと自ら都合のいい女ポジションを取りに行き、取り入ろうとする。
その誘惑に甘えるか甘えないかで√が分岐する。
あれ、これ、WHITE ALBUM2にこんな感じのキャラがいたような……。
和泉千晶って、こんな感じで近づいてきたっぽくない? ねぇ?
風音さんボイス。いいです。
NaturalAnotherOne2nd-Belladonna -で触れて以来、風音さん大好き。
少し真面目な話をしますと、夏夜さんだけが、唯一、余所者と言いますか、
作中で主人公が偶然出会った女性です。
他のキャラクターとは、過去に面識があったり、
テラスハウス陽の坂に来た時点で、関わりを免れない人物でしたが、
夏夜さんだけが純粋な意味合いで、「偶然出会った」相手なのだと思います。
それ故か、本筋にはそこまで大きく関与することはなく、出会った勢いで恋仲になるか、
そうでなければフェードアウトするかの二択という印象でした。
だからか、キャラクター自体は魅力的ではあるのだけれど、
そこまでシナリオとしては楽しめなかったかなぁと。
けれど、基本的に恋愛って、
恐らくそこまでドラマティックにはできてなくて。
いつの間にか出会って、
気付けば惹かれ合って、
そして愛し合って、
という流れこそが普通なのであるならば、
これはとても自然で、上手く描かれているのかなと。
物語としてはさておき、ひとつの恋愛の形としては、
一番自然で、リアリティがあって、説得力があったのではないかと思います。
姫緒√
かなりあくどい商売で地位を築いた澤嶋不動産の箱入り娘。
クールを気取ろうとするも、実際は根っからのお人よし。
個人的に一番ツボったヒロインでした。
人気投票でヒロイン中、最下位だと……。
信じない。私は断じて信じないぞ!
そもそも金髪のお嬢様っぽいキャラに弱いんだ、私。
おたく☆まっしぐらのモデラー(原型師)とか、
エロマンガ先生の山田エルフ先生とかさ。
さて、シナリオについてなのですが、
主人公の誇張表現が少し目についたかなと。
これは個別入る前の共有部分ではありますが、
中堅の上場企業に採用されるのは問題なしとして、
入社してすぐさま、とある企業の粉飾決算に加担していると気付き、
告発できるものなのか、という疑問があります。
昨今はコンプライアンスうんたらで内部監査も多いですし、
上場企業なら当然監査法人の監査を受けます。
主人公が如何に有能であったとしても、
内部にいた他の人物がもっと先に気付きそうなものです。
利益を上げているのに、毎度不自然にマイナスが入ってとんとんなんて、
中で働いてる人たちが黙っちゃいられないでしょう。
ここは違和感強めでしたね。
平木課長(副部長)とクーデターを企てる辺りのやり取りはかなり好きなんですけどね。
すごーく好きなんですけどね。
後の展開で澤嶋不動産を相手取り、一泡吹かせる合併関連の話は、
あんなにスピーディに合併を行うのは不可能といった話もあるそうですが、
そこら辺は詳しくなかったので、あまり深く考えずに読んでいて、
それなりに納得していました。あははー。
あとは、あんなバツイチ男に娘はやれんぞ的なくだりに関しては、
個人的には頭取に、
「そんな自慢の娘が選んだ男なんだ、信じてやりなさい」的なことを言って欲しかったなぁ。
完全にそういう雰囲気だったと思うんですがねぇ。
姫緒さんはねぇ、お人好しで真っ直ぐで、
とにかく好きなキャラなんですよねぇ。
↓のシーンは√部分じゃないんですけど、とても沁み入りましたし。
さて、この√の最後の最後、美都子が実の妹かもしれないと匂わせつつ、
結局はっきりとはわからずに終わります。
個人的には、本当の異母姉妹ではないかと思うのですが、
その点はやはり、さして重要ではなく、二人が幸せであるかどうかが肝要なのです。
そういった視点に立てば、このEDはなるほど、二人とも幸せそうです。
おまけシナリオみたいな未来も十分にありえるのではないかと思います。
この先、困難が立ちはだかったとしても、主人公含めて三人で乗り越え、幸せを築く。
絵に描いたような王道。
いいじゃん。
いいじゃんね。
麻実√
元妻。
もしかしたら元妻が攻略対象のえろげってやった記憶ないかもしれません。
かなり異色なのでは。
過去にすれ違ってしまった理由は、子供を授かることができない体だったこと。
読み進めている内に、なんとなくそうなのかなと気付いていましたが、
勝手に主人公の理も既に知っていて別れたような気になっていました。
実際は知らされることなく別れていて、原因が判明し、元鞘に収まると。
元々好き合っていたのだし、麻美さん未練たらたらでしたし、
これはまぁ、なるべくしてなるひとつの帰結、といったところですかね。
理と麻美の会話シーンはすごくよくできていると感じました。
元夫婦らしい、他人が入ってはいけない、
くだけたなかにも信頼している、ツーカーのやりとりみたいなものが常にあって、
その空気感がたまらなくいい。
書こうと思っても、なかなか書けるものじゃなくないですかね?
丸戸氏は、やはり日常会話シーンの上手さが半端ない、と思わずにはいられませんでした。
あと、これまたWHITE ALBUM2の風岡麻理さんを重ねてしまうところがあったり。
ルックスだとか性格だとか、全体的に真理さんオーラを感じる。
美都子√
全てはここから始まった。
世界でいちばんNGな恋。
そりゃあね、少なくとも日本じゃ法に抵触しますからね。
愛があれば年の差なんて、と言葉にするのは簡単だとしても、
それを実行するためには、周囲とどう付き合っていかなければならないのか。
その点がかなり丁寧に掘り下げられており、方向性こそ違うものの、
本質的にはWHITE ALBUM2のかずさトゥルーを彷彿とさせました。
すくなくとも自分は似ている、と思いましたね。
この√の先でほのかさんが出戻って(?)くるのですが、
騙され具合はかなり引くレベルで、
いくらフィクションといえど、流石に厳しいように思えました。
最後に戻ってきて決着をつけるんだろうなとは読んでいましたが、
思いの外、横道逸れてしまった感は否めなかったかなぁ。
ともあれ、この√は美都子ちゃんが報われるお話なので、それだけで万々歳。
最後にとっておいたものの、他のヒロイン√だと、
悔しそうな美都子ちゃんを毎回見る羽目になって極めて辛かったので。
プレイした人にしか伝わらないのでしょうが、いやもうね、心が痛いんですよ。
罪作りって、こういうときに使うんでしょうね。
まあコメディと銘打っている以上、そこまで辛辣なシリアスには至らないのが、
WHITE ALBUM2とは大きく違う点と言えましょう。
美都子ちゃんは美都子ちゃんで、杉浦小春を想起させます。
無理やり結びつけているわけではなく、なんとなくそう感じてしまうんですよね。
今数年ぶりにやり直したらその思いが強まるのか弱まるのか、気になるところです。
総評。
いいです。
面白いです。
ところどころシリアスが挿入されますが、それはストーリーに深みを与えるためであって、
基本的には明るく楽しく元気よくな、爽快な作品に仕上がっています。
やり終えた後、快い気持ちになれる、いい作品でした。
点数をつけるなら85から90といったところです。
強いて難点をあげれば、BGMの種類がもう少し欲しかったのと、
質がもっと高ければ、より、入っていけたかな。
補足。
WHITE ALBUM2との類似点を幾つか挙げましたが、
他にも二年参りがひとつのイベントとして組み込まれていることも、
同ライターならではないかと感じました。
また、主人公の親の存在がひとつのキーのように描かれているのに、
全く姿を現さない点も同じだと感じました。
ここら辺をちゃんと書こうとすると、
両作品をやり直さないといけなくなりそうなので、
それは今後の課題とさせて頂きます。ごめんなさい。
そんな感じで、駆け足で拙いながらも、
一先ず感想を書き終えました。
もっと腰を据えてじっくり考察できたならよかったのですが、
いやもう本当に仕事でシャレにならんレベルで追い込まれていましてね。はは。
不本意ではございますが、ここまでが今の私の精一杯です。
時間ができて、気が向いたら手直ししようかなとは思いますが、
そんな日が果たして本当に来るのかどうか、それは神のみぞ知るってなもんです。
それでは、またの更新の際はどうぞ宜しくお願い申し上げます。
まずはいつものように、ネタバレをしない方向で記事を書きます。
歳の差カップルホームコメディADV第2弾
と公式が謳っているので、そこは明かしてよいのでしょう。
主人公は三十路一歩手前の28才(作中で29才を迎える)。
そしてメインヒロインは女子○学生。
おう……そいつは確かにNGですわ……。
あらすじについては公式ページのとおりなので割愛致します。
この作品は話数が存在し、
話が進む度にOPが挿入され「第何話 サブタイトル」と示されます。
第13話くらいまであるので、
つまりこれはアニメやドラマの1クールを意識した作りと思われます。
そういったものに触れて育ってきた私のような人間にとっては、
親しみやすく、入りやすい構造だと感じられました。
そもそもこの手のエロゲーというジャンルは、学園ものが非常に多く、
そうでなくとも思春期真っただ中の、ティーンエイジャーが主人公となりやすいです。
需要がそこにあるからと言えばそれまでなのですが、
残念な脳味噌をしている私なりにその理由を考えますと、
別名美少女ゲームとも呼ばれるエロゲーには、美少女が必須要件の不可欠事項と言えます。
そんな美少女との接点をなるべく違和感なく構築し、
あまつさえ、えっちぃことをする上では、主人公も似たような境遇であることが望ましいからです。
流石に40、50のオッサンが、美少女らに自然と好かれていくというのは無理がありますし、
共感もされにくいことでしょう。
だからこそ、主人公とヒロインは同じような立ち位置、
同じような目線で、寄り添うように描かれることが多いのではないでしょうか。
(まあ凌辱ゲーだとか抜きげーなんかはそういった縛りに囚われていない印象ですけどね)
とはいえ、その手のものはありふれ過ぎているのです。
使い古され過ぎたネタである以上、よほど上手く調理しないと、
あれ、これ、どっかで見たことある? なんてことになりかねません。
だから私は、社会人が主人公ってだけでも、冒険していると感じますし、
興味が持てて、面白そうだと思えてしまうんですよ。
本作は、実を言えば発売前からチェックはしていましたし、
当時プレイした友人はとても褒めていたように記憶しています。
しかしながら、実際にプレイするまで十年くらい経過しています。
何故なのか、私にもよくわかりません……。
受験生だったからかなぁ……。
ともあれ、プレイしてみると、そこはご高名な丸戸史明氏のシナリオ、面白いです。
会話が軽妙な筆致でさくさく読めるのに(特に怒涛の名古屋と岐阜のご当地ネタ、掛け合いが好きでした)、
締めるところは締めて、魅せるところは魅せる魅せる(画像を出したらネタバレになるので割愛します……)。
難しい話はどこにもないのに、深みはあるという。口あたりのいい日本酒のような味わい。
エンターテイナーってこういう人を指すんだろうな、と。
内容も内容なだけに、このままドラマになるんじゃないかってくらい。
作中で野島伸司の『高校教師』に触れていたのは印象深かったですね。
着地点やテイストは異なるものの、方向性だけ見れば似通っているのは確かでしょうから。
これと『未成年』は、やはり凄い作品だと個人的に認識していて、
よくお茶の間に流れていたものだなと感心します。大好きですけどね。
加えて申し上げるならば、WHITE ALBUM2の姿が不意にちらつくことでしょうか。
これはネタバレありのほうで言及したいと思います。
あとはー、音楽面がもっと充実していると更によかったですかね。
もう数曲BGMにレパートリーがあったらいいかな。
これ最高っていう曲もなかったのは残念。
ボイス面は文句なしに素晴らしかったんですけどねぇ。
脇役勢含め、掛け値なしによかったですよ。
総括。
噂に違わずやって損なし。
WHITE ALBUM2よりはずっとコミカルで明るい雰囲気なのでオススメしやすいですね。
ネタバレあり感想では、各√毎に感想をまとめ、
総評としたいと思います。今暫くお時間をください。
それでは、また。
*注意書き*
ネタばれしかしません。
未プレイの方はこちらのネタバレなしの簡易版感想をご覧ください。
また、私は名作と名高き「素晴らしき日々」も、
プロトタイプと呼べそうな「サクラノ詩 -The tear flows because of tenderness.-」も未プレイです。
そのため、他の方より事前知識が一段、いや数段劣ることを前以て述べておきたく存じます。
(『H2O』のみプレイ済みですが、もう何年も前、私がモラトリアム人間だった頃の話です)
逆に言えば、ある程度フラットなところでこの作品を鑑賞できるというか、
純粋に『サクラノ詩』を見つめることが出来るのではないかとも思っています。
あと、これは言い訳なのですが、この作品はかなり長めの仕様ですので、
なんでもかんでもひとつひとつ書いていくとなると終わりが見えないため、
私個人が思ったこと、その中でも、これだけは書いておきたいってことを優先して残します。
なので、零れ落ちていくものも多々あるかとは思いますが、
その点は何卒ご海容くださいますようお願い申し上げます。
OP O wende, wende deinen Lauf Im Tale blüht der Frühling auf!
主人公の父であり世界的画家でもある草薙健一郎の葬儀から話は始まります。
いやぁ、重くない? ヘヴィじゃないですか、出だしから。
こちとら世界的画家って言われても全く予備知識ないんだからさと思ってしまいましたし。
置いてけぼり感がすごく強いです。
主人公の直哉なんかも、十数億の遺産を出来心で放棄する回想が入ってきてなんだこれって。
一回目は断っておく日本人的奥ゆかしさみたいな出来心で突っ撥ねるとかありえないでしょ。
十数億ですよ? 十数億!
宝くじ当てても手に入らない額なのに!
その後、喉から手が出るほど欲しかったと悔いているし……。
なんなんこいつ……。わけ若林だわ……。
と、白けてしまう始末。
無論、本気にしてはいませんでしたけどね。
最低でも三回は確認するシナリオでは無かったか?
という直哉の心情が回想に挿入されていたため、
これには何か裏があり、シナリオと言うからには筋書があって、
寸劇なのだろうと察しはつきました。
しかしながら、これは後にも言及することにもなるのですが、
こちらにはその背景が明示されない以上、わけのわからん主人公像が拭えないのですよ。
続きが気になって前のめりになるより、なんだこれと一歩引いてしまう人の方が多いのでは。
まして最序盤です。
ここら一帯の不親切な設計から、つまらんと判じて、ドロップアウトしかねません。
少なくとも私は、結構危うかったと思います。
折角買ったのだし、といったケチくさい性根をしていなければ、きっと頓挫していたことでしょう。
で、まあ、直哉は天涯孤独となったことから、
親戚(でいいですよね?)の夏目藍先生から夏目家に来ないかと誘われ、ご厄介になることに。
その後、親友の夏目圭、彼の妹である夏目雫、美術部元部長の明石、
現部長の鳥谷真琴辺りの紹介を交えながら話は進む中、
六年前に転校した幼馴染の美少女が戻ってきたところでOPが流れます。
「櫻ノ詩」
いい曲ですね。はなさんの歌声もいい。
ニコ動で有名になるよりも前からずっとはなさんのことは好きだったので、
(forestという個人サークルで出してた「flower.」というCDを当時のM3で買ってたくらいには)
今尚こうやって活躍されているのを目に出来るのは嬉しいことですね。
電気外祭り行ってCD買いてぇなぁちくせう。
(ここを書いていたときはまだ年明け前でした……)
ともあれここまでがOPです。
I Frühlingsbeginn
春の始まり、です。
精神的妹を名乗る美少女こと氷川里奈、
その友人、川内野優美が現れたりしつつ、美術部勧誘を手伝わされる直哉。
その合間合間で生徒会の明石姉妹や変態外国人のトーマスなども出始めて、
主要キャラ勢がコメディチックに描かれ、掘り下げられていきます。
藍先生のお姉さんぶってるけどどこか抜けているところ(寝起きのエピソード)とか、
真琴さんの山盛り炊き込みご飯の辺りなんかは個人的に楽しめて、
段々とエンジンがかかってきたような感じ。
けれども、真琴の美術部勧誘の仕方にはちと辟易してしまったところがあります。
彼女には大いなる目的があるらしいことは分かるのに、
それが何なのかわからない以上、どうしてそこまで手を尽くすのか見えてこないんですよ。
だから素直に応援しづらいんですよね。
いやまあ、こんな美少女が困っているならね、
私みたいな、いいかっこうしいのチョロ男だったらホイホイ手を貸すのは道理ですがね。
そういう話じゃないですからね。
更に言えば、空回りだったと結果的に真琴自身が述べていますが、
明らかに勧誘方法に手落ちがあったというか、
あれだけ頭いい描写の鳥谷さんらしくないのですよ。
去年、圭の女装やら直哉のルックス(遺産?)目当てで釣り上げた人達は皆、
結局美術部自体には興味がなくて去っているのに、同じ手法を取るっていうのはどうかなと。
デッサン会もそれに類するものですしね(物でなく対象が美少女 with メイドコスのため)。
無論、部員数に応じて多くの部費、予算がもらえるというのはわかるんですが、
この場合、真琴の目的を鑑みるに、予算よりも才能・実力といった個人の資質、
そうでなくとも、美術活動に興味がなきゃ意味ないでしょと思うのは素人考えなのでしょうか。
作中で言及されていたとはいえ、やはり、同じ過ちを行うのは真琴らしからぬと思いますね。
うん、不自然です。全然合理的じゃない。
また川内野優美に手渡していた勧誘用のビラ、
CGを見る限り文章のみで全く惹きつけるものがないんですよね。
仮にも美術部なら目を惹くイラスト、挿絵、レイアウトなりの工夫を散りばめるべきでしょう。
あの如何にもWordで作りましたみたいなビラが許されるのは文学系の部くらいではないでしょうか。
この辺りのちぐはぐ感からまだ完全には浸りきれていない私がいましたね。
とはいえ、ビラの内容は文章に限るといった規定があったかもしれないですけども。
II Abend
元部長である明石の奇怪な行動、それらに対する解答が示されるのが二章の醍醐味でしょう。
つまり二章は、『櫻達の足跡』の話だと言い切ってもよいのではないかと思います。
明石はあまりにいい加減な言動が目立ち過ぎたため、
これはわざとなんだろうなというのはひしひしと感じていたのですが、
秘めた本願に対する在り方は想像以上にストイックで、何より妹思いのいいお兄ちゃんで驚きました。
ただこれも、明石がどんな人物なのか、
直哉や真琴はわかっているから勘繰ったりあれこれ出来るんでしょうが、
こっちは手持ちの情報が不足していて、変人にしか映らないんですよね。
直哉と明石が手を組んで成した一連の事件(雫√の過去回想)の辺りを知っていたら、
あるいはそれに似たような、彼の本質が垣間見えるエピソードが明かされていたならば、
こいつはやるときはやるんだよなって思いながら見られたと思うのです。
先程から挙げているように、個人的にこの作品を手放しで絶賛できない理由は、
ここに根差しているふうに感じられます。
全体的に漂う、敢えて情報を隠す、後出しにする空気感、これではないかと。
あらゆる情報が目の前に提示されていて、その上で、
では、どうしてこんなことをしたのでしょうか?といった形式ではないんですよね。
実はこういうことが過去にあって、実はこの人物はこういうやつで、というような、
伏せていたカードを突然ひっくり返されてようやく納得いく感じ。
優美の台詞でわかりやすいものがあります。
「だいたい分かってるんです……。
あなたは里奈や私との関係みたいな過去を、数え切れないぐらい持っているのでしょう……」
このとおり、メインキャラの多くと直哉は深い繋がりと言っていい過去を有しています。
勿論直哉は記憶喪失ではないので、全て覚えています。
しかしながら、私たちプレイヤーは知らないのです。
知らないから、話についていけないときがある。
なんで君たちはそんなに直哉くんに期待を寄せるのかね、
そんなにぞっこんなのかねと疑問に思ってしまう。
なんでもかんでも明かされていなければならないなどと暴言を吐くつもりはございません。
けれど、この作品はそういった節が極端に強く、些か目に余るのですよ。
もしかしたら二周目を前提に作っているのかもしれませんが、それはそれでなぁ……。
とまぁダメだしっぽいことばかりを並べてしまいましたが、
もうこれ以上、そんなにマイナスなことを書くつもりはありません。
話を戻します。
『櫻達の足跡』についてですが、この制作時の熱い雰囲気は素晴らしかったと思います。
明石には明石の理由があって、入念な下準備を行い、制作に着手し、実際に成し得たわけですが、
一人ではできる作業ではとてもなく、それを可能にしたのは、櫻の芸術家たる直哉。
彼の描いた『櫻日狂想』、また彼自身が放つ因果交流の光に魅せられた、美術部一同。
ここの部分は、第六章の真琴さんが熱く語ってくれていますね。
答え合わせみたいな感じでしたが、本人の言うとおり、楽しかったのでしょうし、
言われるまでもなく痛いほど楽しさが伝わってくる、いいシーンでした。
ああいう熱い見せ場を、しっかり盛り上げてみせる手腕は流石の一言。
出来上がった際には、うおおおおおみたいなキモイ唸り声が実際に出ちゃいましたもの。
それくらい、よかった。とてもとてもよかったです。
III Olympia
御桜稟√です。
簡単に概要でも。
六年前、不慮の事故により、御桜家の屋敷で火災が発生した。
逃げ遅れた御桜母親は、幼い稟を外に投げ、逃がす選択を取る。
(何階の高さからと明確には出てきてなかったように思う)
それを直接受け止めた直哉は右腕を酷く痛め、今までのような絵は描けなくなってしまう。
母親が亡くなったこと、直哉の右腕を損ねてしまったこと、
それらがあまりにショックだったのだろう、彼女は記憶を閉ざしてしまった。
母が死んでいるにもかかわらず、ただの人形を病弱な母親だと思い込み、世話をするようになった。
見かねた御桜父はその人形を隠してしまい、
稟は母(人形)の死に目に会わせない父親に恨みを抱くこととなる。
父親は屋敷が焼失したこともあり、離れた地で暮らし、稟が思い出さないよう手を尽くす。
直哉も直哉で、自身が描けなくなったことから稟が思い出す可能性を潰すため、
敢えて、描けないのではなく、描かないと言い張ることにした。
六年間送られ続けてきた手紙を無視し続けた理由も、そこに起因する。
全てを思い出した稟はその身を再び投げてしまおうとするも、間一髪、直哉が壊れた右手で繋ぎ止める。
そして、言う。
「だったら、お前が俺の手を掴め!」
「俺が掴めない! 俺が握れない! お前の手が! 俺の手を掴め!!」
「それが責任ってもんだろ!!」
「俺の右手を奪ったと思うのは勝手だ。そう思いたければ思うがいいさ!
だが、だったら責任を取れ!!」
稟は直哉の右手を取って、一緒に歩く未来を選び取る。
この√では稟の身に起きた過去、凛と凛の父との確執、直哉が描かなくなった理由等が、
徐々に紐解かれていくこととなります。
けれど、お分かりの通り、根底の才能や草薙健一郎の弟子であったこと等は、稟は忘れてしまったままです。
あくまで直哉の目から見た真実でしかないのです。
そのため、この√の稟は、過去のあれこれを克服したところで、
エロマンガ蒐集を趣味とする、ちょっとエッチな美少女女子高生といった存在でしかなく、少々パンチが弱いです。
吹の「忘れてしまったものは、忘れさられるべきものだったからこそ、忘れているのかもしれません……」
という台詞が全体を通して、マッチするように思われます。
何故なら、傍目から言って、この√の稟は幸せそうだからです。
想い人の直哉とこの先を歩んでいくのだろうから。
「へたくそな二人の絵だけど、だけどとても幸せそうだから」
これも吹の台詞ですね。
といいますか、締めに結論持ってきちゃっていますね。
これは少々蛇足かも。判断は読者に委ねてあげるべきかもしれません。
わざわざ言葉にしなくても十分伝わってきているのだから。
柔道の受け身なんかも、わざわざ後半タネ明かししなくてもよかったんじゃないかなと。
あの落下の描写だけで、ああ、受け身を身に付けたかってそういうことかって腑に落ちると思うのですよ。
ともあれ、幸せそうで何よりです。
あと、稟と稟の母親が同じ萌花ちょこさんという声優で感心致しました。
母親の声、場面が場面であまり堪能できはしなかったのですが、艶があってよかったです。
それと、個人的にオランピアとなると『ホフマン物語』より、『砂男』の印象が強いです。
そこに何か理由があったんでしょうか、私にはわからなかったです……。
また、母親の名であることや、
元は人形であることをギャグの中でそれとなく仄めかしていたのは面白かったです。
あとでこれはそういう意味か! と一人納得しました。
III ZYPRESSEN
氷川里奈√です。
この√はもう殆ど規定的な路線といいますか、
里奈の好感度が初っ端からMAXなので、あまり触れることがございません。
(好感度に関しては殆どのキャラに言えるのでしょうが)
伯奇と中村義貞の伝奇をなぞらえながら、里奈と川内野優美の過去、
そして櫻の芸術家こと草薙直哉との邂逅なんかが語られていきます。
ここで明かされるのは、里奈が過去に大病を患わっていたこと
(薬名から癌? 抗癌剤の副作用により光線過敏症になる?)、
その死の匂いに魅せられた優美は、段々と牙を抜かれオオカミではなくなっていったこと。
そして御桜家焼失事件後の直哉は、街のあちこちで落書きしては、
思うように描けず、藻掻き、足掻いていたこと。
そんな最中、里奈と優美の公園の出会いに出くわし、
自身の絵に里奈が糸杉の絵を描き足していたことにも気付く。
そこにリレーのように引き継ぎ直哉もまた重ねていった。
「こんな狂った嵐の夜なら――そうだな――そろそろ花をつけてもいい時期だと思ってな」
なんて厨二台詞を残しながら、彼は里奈の死臭を取り払った。
彼女は言う、弟子にしてくださいと。
けれど直哉は断り続けるものだから、では精神的妹と名乗りましょうということになった。
好感度MAXも頷けますね。
多感なお年頃のときに、文字通り、人生を塗りかえられてしまっては。
直哉は「お前のために最後の絵を捧げたんだよ。他の誰でもない」
なんて格好いい台詞を伝えています。
なんだよこれもうプロポーズみたいなもんじゃんかよかっけぇなくっそ!
「恋は片道だけでも成立するが、恋愛は片道だけでは成立しない」
とも残されていらっしゃいますが、この、見返りを求めない姿勢、
いや、本当は見返りを期待しているのだろうけど、例え見返りがなくとも恋に、愛に殉じようという姿勢、
それはとても美しいものですよね。
これはいいなって思いました。
この√の二人も、幸せそうですね。
これからも噛みしめていくんでしょうね。
III PicaPica
鳥谷真琴√です。
個人的に作中で一番惹かれたヒロインです。
キャラデザ、性格、声、どれをとってもいい。
それだけに一番印象に残ったシナリオでもあります。
真琴は唯一、直哉と過去に何もなかったキャラクターであり、
他のヒロインとは一線を画すというか、むしろ一線を画さないといったところでしょうか。
ですから、段々と惹かれ合い、恋仲になっていく過程が実に自然で、
他√よりも作品に没入していきやすい作りだと感じました。
真琴には直哉と夏目圭の二人を、さらに先へ押し上げていくという野望があった。
そのために美術部をよりよいものにしようとしていたし、
何より、直哉に絵を描かせようと躍起になっていた。
そこに校長(鳥谷紗希)と中村麗華のいざこざが関わってきて、
元は中村性であったことや、圭が弟であること等が明るみになっていく。
そして最終的には渾身の一作を制作するも、
彼女の願いは叶えられず、そこには愛だけが残った。
とある方が、鳥谷紗希もとい校長は、草薙健一郎を動かせなかったが、
最終的にあの壁画を、追い求める美を手にしている。
そして子の真琴も途中までは同じ道を辿っているが、それには失敗した。
と言及されており、なるほどと思いました。
確かに、草薙健一郎自体に強い関心があり、
他の誰よりも彼を騙そうとして騙せなかったことが彼女の口から語られます。
けれど、幼少の藍に語ってみせた、
「彼が見るものと、私が見るものは違う。
そして、私はその事に誇りを持っている……」
という台詞は、私にはただの強がりには思えなかったのですよ。
真摯な、実直な思いが吐露されたのではないか、と。
だとするならば、彼女は愛を得られない代わりに、
信ずる美を手に入れた、と言い切るには若干の抵抗を感じます。
個人的には、校長にとって、彼女の生涯そのものが、ひとつの作品なのではないか、
そしてそこに彼女の信ずる美が残ればそれでいい、と思っているのではないだろうか。
草薙健一郎とともに学び同じものを見ようと夢想したこと、それができなかったこと、
自分の子を守ろうとしたこと、中村家を排斥して校長としていること、
全てをひっくるめて、彼女は誇りを持っているんじゃないかなと。
まあこれは憶測の域を出ないでしょう。
手持ちの情報は十分とは言い難いと思いますし、
それに私の、こうだったらいいなぁっていう願望めいたものも多分に混ざっている気がしますので。
対して、鳥谷真琴です。
理知的な言動が散見され、絵が描けて、陶芸の才があり、
勉強もできるし、バイトもこなして生計を立てているというすごい女子高生です。
作中でも器用という言葉はやたら出てきますが、本人は器用貧乏と捉えているよう。
この時点でもう、ある程度、自身の才覚の限界を受け入れているふうに見受けられます。
結果、彼女は念願の月には手が届きませんでした。
直哉は絵を描かなかったし、圭は描き切ることが出来なかった。
あれだけ時間を費やして、身を粉にして全てを擲っても、それでも届かなかった。
この結果は、極めて現実的で、正解なのでしょう。
しかしながら、個人的な気持ちというか、単なる我儘を言わせてもらえれば、
報われて欲しかったと、ただひたすらに思います。
そうしてしまうと、整合性が失われますし、ご都合主義になってしまうのでしょうがね。
例えば、作品とは違うところで、真琴の愛情なりで未来の形が変容していったらとか……。
うーんやはり私的な希望ですね、これは。
しかしながら、違う√では『蝶を夢む』を実際に描いてみせた訳ですしね。
そうすると真琴の苦労は何だったの、無駄だったの、徒労だったの、と思ってしまいます。
何も賞を取って、世界的芸術家になってくれというのでもなく、
ただ描いて欲しいという想いに、何故直哉は応えてくれないんだ、と思ってしまうんですよね。
単純に真琴さん好きの意見で、中立性を欠いているのでここまでにしときます。
ともあれ、真琴さん可愛過ぎますね。
ただあの簪みたいな髪飾りって校則違反にならないのでしょうか?
伝統ある私立高となると結構キツイ気がするんですが、まあ可愛いから何でもいいんですけど。
あとはあれですよ、入学早々、美術部を笑顔で掃除する真琴さん。
直哉の『櫻日狂想』に惚れこんで、作者に会えるのを楽しみにしてるあの感じ。
すごくいいですよね!
後姿の立ち絵も最高だし、
圭を看病してるときに見せた姉の顔もよかった。
最後に、話が幾分ずれるのですが、
真琴がフェルナンド・ボテロの『猫』について触れていて、
そこの描写がすごくよかったなぁと。
(フェルディナンド・ボテロと作中では語られていましたが。「ディ」は誤りですかね?
美術関係には頗る疎いので判断がつかないのですが……)
なんというか、キャラクターが言わされているという感じがまるでなくて、
真琴自身の真摯な思いから出てきてる言葉のように感じられてすごくよかったです。
で、このアリスの庭と呼ばれる彫刻庭園がある美術館というのが、
調べたところ宮城県美術館のようなのです。
プライベートな話ですが、私、仕事の都合で仙台に来てもうそろそろ4年が経とうとしています。
これはもう行けってことじゃないかなと思うんですよね。
自転車で行けそうなくらいの距離なので、暇見て足を運んでこようかと思います。
幼少の真琴さんがぺちぺち触れたであろう猫を見るために。
(画像検索すると、本当に丸々としてて笑っちゃいます)
III A Nice Derangement of Epitaphs
夏目雫√です。
ですが、この√はどちらかというと、
草薙健一郎と草薙直哉の、親子の物語としての側面が強いと感じます。
健一郎の葬儀から始まるこの作品ですが、
その始まりまでの直近の出来事が描かれていることになります。
健一郎は、中村家の悲願として生まれた伯奇である雫を買い取るために(守るために)、
これまで金を稼ぎ続けたことを病床にて明かし、その役目を直哉に託す。
直哉は託された役目を果たすため、明石とフリードマンの手を借り、
中村章一に贋作を売りつけることに決める。
右手が思うように機能しない直哉は蔵で独自の装置を用いながら、
『櫻六相図』を完成させ、見事、雫を取り戻すことに成功する。
大まかな流れはこんな感じだと思うのですが、
まず気になる点として、伯奇の能力って、そんなに有用なのかなってのがあります。
能力の良し悪し如何にかかわらず、伯奇そのものが繁栄・成功の象徴なのかもしれませんが(座敷童的な)、
現実的な目線で考えると、どうしても、そこまでの価値はないように思えてくるんですよね。
それだけ今の中村家の目が曇っている、落ちぶれているということなのでしょうか。
また、唯一まともに機能していた思われる、稟の絵画の才能を呑む場面。
「母親をよみがえらせたいという夢」を呑み込んだというのは分かるのですが、
それで記憶と才能を丸々抜き取るっていうのは、都合が良過ぎるというか、
物語の要請に対して、キャラクターが動かされてしまった印象を受けます。
そもそも千年桜の共鳴といったものが、
どういったものにどのような影響を与えるのものなのか、明確に定義されてはいないようだったので、
どうとでも取れてしまうし、どうとでも結び付けられてしまう印象を抱きました。
伯奇の伝奇が根底にあるのなら、不遇故結ばれない二人に味方するだとか、
ある程度限定されたルールがあるべきだったのではないかと思います。
そんな雫の過去やらがあって、今の雫に繋がるのですが、
直哉が雫をちゃんと認識したのは、物語の始まる数カ月前くらいなのですよね。
思ったより存外関わりが薄く、直哉のあの如何にも旧知のような接し方からはやや違和感がありました。
また、稟に心を与えられたから、直哉への想いが強いという描写は、なるほどと思いましたが、
じゃあ雫ってなんなの、稟のコピーでしかないの、代替品なのって思ってしまう自分もいて、
ここは純粋に、雫から見た直哉だけで、直哉に惚れて欲しかったかもと思ったりもします。
ただ、これは私の好みの問題だと思うので強くは言えませんね。
正直、先にも述べましたが、この√は『櫻六相図』に纏わる、
草薙親子の物語に全てを持っていかれていると思います。
これまで練習こそ続けていたものの、ずっと作品を作らずにいた直哉が、
父の意志を継いで、『櫻六相図』を描き切る。
本人は贋作と言い張るものの、その作品を見た誰もが、そんなことは思いもしない。
それは健一郎も同じ。
だから彼はそこに自身の銘を刻む。墓碑銘として。
口ではなんやかんやと言いながらも、
心のどこかでは認め合っている描写が作中にはちらほらとあって、
そしてここで全てが結実するのですよ。
今作品でも屈指の名シーンではないでしょうか。
これは間違いなく直哉が一つの壁を乗り越えた瞬間であり、
それを齎したのは、父との訣別だったというのは、ドラマがありますよね。
健一郎が『横たわる櫻』を完成させたのが、直哉の母、水菜の死があったからというのも、
実に因縁めいていて、心揺さ振られるものがありました。
IV What is mind? No matter. What is matter? Never mind.
草薙健一郎の過去回想です。
中村水菜√とも取れます。
健一郎は病床に横になりながら、昔の教え子であった美術部顧問の若田先生に、
水菜との馴れ初め、中村家とのいざこざを語ってみせる。
夏目家の屋敷は伯奇を生み出すそうと、中村の血を色濃くするために、
妾の妾をつくっていた屋敷であった。
その妾の一人である水菜に出会った瞬間から好きになってしまった健一郎は、
彼女を救うべく、中村家に立ち向かう。
祖母の夏目琴子の力を借りて、オランピアの模写を十億で売りつけるも、
水菜が交渉の際、駆け引きを乱してしまったがため、交渉が拗れ、
健一郎と水菜は駆け落ち同然で姿をくらませる。
そんな昔話を訊かせた後、地球の裏側で買ったというウイスキーを開け、
若田と一緒に祝杯をあげる。
こちらは回想なので、あまり深く考えず読んでいました。
草薙家と中村家の抗争みたいな話は出ていたと思いますが、
それにしてはそこまで大きな事件ではなく、こじんまりな感がありました。
あくまで印象ですけどね。
水菜がどんな人物で、健一郎とどうあったのかがきっちり描かれていたのは、
知りたがりの性分としては個人的に喜ばしいことでした。
H2Oのはやみに似てますよね、立ち絵とか。
それだけに、母親としての水菜も見てみたかったなという気がします。
単純に対比としても興味深く、また、マザコンを自称する直哉の前では、
どんな顔をしていたのかなって。気になりますね。
あと、幼少期の藍先生可愛すぎませんかね。
もうあからさまに狙っててあざといくらいなんですが、だが、それがいい。
V The Happy Prince and Other Tales.
夏目藍√です。
この√がVIへ続くのだから、正史と捉えるべきなんでしょうね。
直哉は圭の望む、二人で世界的芸術家になろうという夢を、
最早約束とも呼べるものを叶えるため、ムーア展に照準を当て、制作を開始する。
その過程で長山香奈との語らいや稟の才能を受け継ぐ吹との勝負を経て、
直哉はついに渾身の一作、『蝶を夢む』を完成させる。
しかしながら、圭の『向日葵』がより評価され、受賞と相成る。
だけならまだ話は簡単だったのですが、突然の交通事故により圭が死亡。
そのショックにより雫は伯奇としての力が制御できなくなり、
吸い取った絵画の才能が稟の元へ戻り、稟が大賞を受賞するという運び。
急でしたよね、これは。
まさかこのタイミングで死亡事故かよって思ってしまいましたけど、
そういうことは確かに世の中ザラにあったりするものなので、
そのことには口が挟めません。
タイトルの通り、オスカー・ワイルドの『幸福の王子』が下地になっているようです。
直哉を王子とするなら、圭はツバメで、王子の頂きまで届こうと必死になっていたら、
死んでしまったというなんとも切ない話です。
直哉も直哉で、圭が謳う「二人で世界的芸術家になろう」という夢を、
実は胸の奥底で抱えていて、圭が待っていてくれていることに甘えていた。
けれど、自身の最高傑作は圭に届かないまま、まして見せることも出来ずに終わってしまった。
彼は、洩らす。
「俺は、俺は間違っていたのか!?」と。
稟を受け止めるとき、あるいはそれ以外のときに右手を使わなければよかったのか、
はたまた、稟のことは気にせず描くことを辞めなければよかったのか。
そうすれば待たせることはしなかった、と。
これらはタラレバ話であって、どうしようもないことなんでしょうが、
確かに直哉がそのような選択を取らなければ、違った未来になっていたかもしれません。
しかしながら、そのような状況で人に手を差し伸べないような普通の人間が、
果たして櫻の芸術家として存在できるでしょうか。
因果交流の光としてあられるものでしょうか。
結局のところ、私は無理だと思うんですよね。
直哉が直哉である以上、何度ループしてやり直すことになっても、
そのときが来たら、直哉は同じように助けてしまうんじゃないかなって思うんです。
そうでなくて、何が櫻の芸術家かって思いますからね。
VI 櫻の森の下を歩む
事が終わって、十年後。
直哉は弓張学院で美術の講師をしていた。
そんなある日、『櫻達の足跡』の上からラクガキをされる。
首謀者はあの長山香奈で、彼女は芸術家集団ブルバギという団体の主宰となっていたのである。
この行為は草薙健一郎越えを果たす意味合いがあるという。
(正直これは的外れな行為に思えてならないが)
とはいえ、父の遺作を、仲間と作った掛け替えのない作品をおいそれとそのままにはしておけない。
直哉はステンドグラスに見立てたセロハンを、日光を通して映し出し、上書きするという手法で守った。
また、藍と校長の取り決め通り、直哉は翌年度から正規の採用となることになる。
大まかにはこんな感じでしょうか。
かなり省いてしまってもいますが。体感では結構短めです。
サクサク進むのも大きいかもしれません。
この√で稟は世界的芸術家として活躍しており、世界を股にかけて仕事をしているといった感じです。
世間一般からすれば、世界的名誉を若くして手にした美女であり、
人生の勝ち組のようにしか見えないことでしょう。
しかしながら、プレイヤーからすれば、彼女は少しも幸せそうには見えないのです。
Olympiaのような姿とはまるで違う。
美の神様に呪われてしまっているかのよう。
それでも彼女が表舞台に立ち続け、第一線で活躍しているのは、
作中でも触れていたように、直哉の右腕への贖罪という側面と、
圭が亡くなったことから、圭の代わりに直哉という天才を引き上げようとしているからだと思われます。
まだ才能を失う前の幼き稟は、直哉と一緒に絵を描くことをとても楽しみにしていると雫に語ったこともあり、
それがひとつの支えとなっていても不思議はないのかなと解釈しています。
にも関わらず、直哉は弓張でしがない美術講師をしているというのも、
なかなか身につまされるものがありますね。
この十年、彼が全く何もしていなかった訳でもないのでしょうが、
特段作品の発表もせず、燻っていたような印象を受けました。
『蝶を夢む』のような作品が描けたのだから、圭の死を受け容れて、
彼の望んだ高みまで登っていくっていうのが、自然かなと思ったのですがね。
話が戻ってしまいますが、この稟は、「才能の奴隷」といった言葉が似合うと感じました。
『スパイラル〜推理の絆〜4 幸福の終わり、終りの幸福』という、スパイラルというマンガの小説版(その4巻)を、
私は中学生の頃から愛読していたのですが、そこにあった「才能の奴隷」という概念が合うかなぁと。
大きな舞台があって、その舞台は自分にしか務まらないとしたら、その者はどんな気持ちになるだろうか。
才能の使い道が選べない、嫌でもその舞台を務めなければならない、死ぬまで才能に縛られる。
それは「才能の奴隷」だ。自分の才能に人生を焼かれ続ける。何て哀れな存在だろう。
ちゃんとした引用ではないのですが(一部省きました)こういったことが作中に描かれており、
これは稟にも全部が全部でないにしろ、ところどころ当てはまるんじゃないかなと思うんですよね。
そしてそれは直哉も同じ。
あれだけの才がある以上、与えられた者はそれを全うしてみせなければならない。
才能が与えられなかった者の分まで、しっかりと。
これは才能がない側の僻みのようなものなんですが、でも、それを分かっていて尚、
翼ある者には空高く飛んでいて欲しいと思うんですよね。
『ましろのおと』という三味線を扱ったマンガでは、
凡人の音であることを受け容れるのに何年もかかったと洩らすキャラに、こんな台詞があります。
「才能ある」「天才」と謳われる奴が羨ましかったよ
だって そうだろう?
能力の奴隷になれるんだ
天才には天才の苦悩があるんでしょうが、ない者にはない者の苦悩があるんですよね。
鳥谷真琴の√でもそうだったように、届かない者には届かない世界が存在するのだと。
長山香奈が直哉にしきりに訴えていたことも思い返されますしね。
なんでまあ、天才と才能とが両想いでめでたしめでたしとはいかないのでしょうか。
他には、あの美の神様なり、直哉側の弱い神というのは、
学のない私にはいまいち理解しきれませんでした。
稟の言う美の神というのは、絶対的な、揺るぎのない強固な美そのもので、
変わらない尺度としてずっと横たわっているもの。
対して直哉の弱い神というのは、そこにあると信ずるならそこにあるもの。
夏目琴子が雫に対して心というものを説いた、あの話と同じ。
そこに心があると思うなら、そこに美があると思うなら、
そこには心があって、美がある。
というふうに私は考えたんですけど、大丈夫ですかね?
周りで『サクラノ詩』やってる人いなくてですね、まともに語らうこともできてないんですよ、これが。
そう言えば長山香奈や、VIの真琴もこんなふうに言ってましたよね。
「例外なんてあるもんですか! 私が信じたもんが正義よ! 私が信じたものなのだから、それでいいの!」
これも同義なんじゃないかなって個人的には思うんですよね。
で、触れてこなかったVIのヒロイン勢。
概ねみなさん可愛いですね。これは『サクラノ刻』が楽しみでなりません。
守りたい、この笑顔。
とりわけルリヲさんのチャラさと、川内野鈴奈の優等生感、どっちも好きです。
このコンビ、姉同士よりずっと好きなんですよね。
優美さんは正直別ゲームじゃねーかってくらいぶっ飛んだヒロインなのでね、はい。
あとは片貝さんかな。
直哉の最後の辺りもそうなんですが、彼らは今の私とかなり年齢が近いキャラクターなので、
色々と、言葉ひとつひとつが沁みてきます。
と、まあ結構書き込みましたわ。
ぶっちゃけ、プレイしてから更に日が経ってしまい、感想がちぐはぐで悔しいのですが、
取り敢えずネットに上げておきます。
そうすれば暇なときちらちら見て、ここ直そう、あそこ加筆しようとか出来そうですし。
このままPCの片隅に眠らせておくだけだと流石に書いた自分が報われない気がしますので。
てな訳で、あくまでプロトタイプだと思って頂けたら幸いです。
近い内、恐らく修正します。
ではでは。
サクラノ詩 -櫻の森の上を舞う- ネタバレなし感想
*ネタバレ有りの感想はコチラです*
前書き(どうでもいいことなので読み飛ばし推奨)
プレイを始めて二ヶ月が経ちました。
ようやく感想を書き始めますが、ここまで至るにはそれはもう長い道程が。
というのは冗談で、単純に二周してたからです。
一周目が終わるまで軽く40〜50時間はプレイしていたと思うのですが、
そうなると前半の細かいところなんかは結構忘れていたりするんですよね。
そうでなくとも、何が伏線だったのかおさらいしておかないと、
いい加減で説得力に欠ける感想になってしまう危惧もあったため、
改めてやり直すことは必須と感じました。
一周目のときにちゃんとスクリーンショット撮りながらやっていれば、
ここまで苦労はしなかったのですが、それだと作品に浸れませんしね。
事前情報と購入動機(どうでもいいことなので読み飛ばし推奨)
私が『サクラノ詩』の名を初めて目にしたのは忘れもしません、
今は亡きパソコンパラダイス(パソパラ)を立ち読みしていたときです。
橋本タカシさんが表紙を描かれてた頃と記憶しております(2005年)。
(話が脱線しますが、この頃の橋本タカシさんの画って今でも通用しますよね)
絵は基4%さんのものだったような覚えが。
タイトルに相応しい淡い絵柄が妙に印象深く、興味を惹かれ、
いつかプレイしたいと思いました。
企画自体は2004年始動とのことでしたが私が知ったのはそのときです。
まだ高校生の時分でした。
あれから10年です。
私もオッサンになっちまいましたよこんちくしょう。
そんな『サクラノ詩』ですから、皆様ご存知のとおり、
界隈ではそりゃあもうネタにされていたものです。
延期四天王なんて目じゃないですからね。
とはいえ、はるはろ!とかおま天とかを挙げられると弱りますが……。
ですから本当に出るらしいと知ったとき、
買わなければならない、といった使命感のようなものを抱き、即ソフマップで予約しました。
勿論、それだけで購入に踏み切った訳ではないのです。
『サクラノ詩』が中々世に出てこなかった最中、同メーカーブランドから『H2O』というエロゲが出ました。
惹かれた絵柄と塗りがそこにはあって、ついOHPにあったOPを見たところ、
これがとてもとてもよかった。
特に歌が最高でした。
何を隠そうこれがピクセルビーさんを知る切っ掛けでして、
それはもうアホみたいに繰り返し繰り返しOPを聴いて聴いて聴きまくったものです。
当時、個人的に同人音楽にすごく入れ込んでいたこともあり、
Promise以降のCDは全て手に入れているはずです。あとPaint。
で、予約特典だかでこの曲のCDも付くよって話だったもんで、『H2O』を買いました。
そしたらshort.verでやんの。
泣いた。
でも、でも。
ゲームとして『H2O』はすごく面白かったんですよね。
確かサウンドノベル形式で、読ませる話で。
強いて不満を挙げるなら幼少期との立ち絵の差異が無さ過ぎたことでしょうか。
あと、割と短めだったのが若干残念でした。
その分、よく纏まっていたとも言えますが。
また、だからこそ『√after and another』出たのかもしれませんけど、
あの頃はお金がなくて、欲しくても買えず、結局今日まで未プレイ。
そんな枕歴の私です。
つまり『H2O』しか経験値がないのですが、
それでも思い出深いブランドであり、購入に至るには十分でした。
ストーリー概要
世界的な画家として名を馳せた、父、草薙健一郎が亡くなり、
主人公である草薙直哉は、親友の夏目圭の家にご厄介になる。
そのことを発端に、直哉の周囲はより賑やかに、色付いていくこととなる――
……みたいな(長々と書くと説明にしかならんしなぁ)。
詳しくは公式ページを読みましょう!
シナリオの感想
すごくよかったですね!
なんと言いましょうか魅せ方を知っている、心得ている、という印象です。
物語に求められるものは起伏だと、自分なんかは常々思っているのですが、
(それは、心情とも言えるし、ストーリーにも言える)
この作品は、その起伏を巧みに作り出すことで、ここぞという最高潮の場面を描き出し、
とても熱いものに仕上げてくれる、そんな職人的な面白さを感じました。
詳細はネタバレありのほうで書こうかなと思います。
システム面
特に問題なし。
音楽面
いいですね。
全体的にいい感じです。
「舞い上がる因果交流」「花弁となり 世界は大いに歌う」「この櫻ノ詩の下(OPのアレンジ)」
この辺りが上手くハマってくる場面には弱かったですね。
ボイス面
配役もいい感じ。
特に鳥谷真琴と吹の声優さんの演技は光って聴こえましたかね。
夏目琴子も年季入ってる感じですごくいいと思いましたが、
沢野るいさんってググっても出ててこないんですがどなたなんですかね?
男性陣も良好。オッサン枠の健一郎もフリードマンも恰好えがった。
だからこそ、私は直哉にもボイスがあるべきだと思いましたね。
最近のエロゲは全くプレイしていないので(折角買った『ランス03』と『ぼくの一人戦争』積んだまま)、
現在の主流といったものを把握しきれていないのですが、
出来うるなら主人公にもボイスがあって然るべきだと思うんですよ。
アニメやドラマCDにおいて、主人公に声がないなんてことはまずありえないわけですよ。
でないと、存在していないことになってしまうから。
エロゲにおいてはそこまでの重要性はないのでしょうけれど、
だとしても、主要メンバーに声がある最中、主人公だけ文章というのは、
有体に言って、「浮く」んですよね。
違和感の塊でしかない。
いるんだかいないんだか曖昧になる。
予算的なものなのか、主人公はプレイヤーの代役だから不要だと考えられたのか、
そこのところは想像する他ないのですが、
直哉という主軸となるキャラクターに立ち絵まで与えておいて、
声がないというのは、自分にはしっくりこなかったんですよね。
合わなければオフにできるようしとけばいいのですし。
その点に関してはWHITE ALBUM2のようにして欲しかったなぁなんて思いがありました。
(他メーカーの他作品で申し訳ないのですが、ぱっと思いつくのがこれでした、ご了承ください)
総括
胸を張ってオススメできます。
面白いです。やりましょう。
……ただ、出だしは正直ものすごくつまらなくて、買ったことを後悔しかけた程でした。
スロースターター気味なので、どうにか最初は堪えてプレイして欲しいですね。
あと、先にも書きましたが、通しで40〜50時間かかったくらいには長いです。
私は本読むの遅いほうなので、早い方はもちっと短いかもしれませんが、
それでも結構な大作だと思いますので、腰を据えてプレイできる方でないとしんどいかもです。
点数を付けるとするなら、
90点辺りでしょうか。
続編の『サクラノ刻』とやらが出る予定だそうなので、
これ単体だとまだ難しいところもあるようにも思いますが、
概ね満足な出来でした。
10年越しだとかネタにしてるだけで終わらせないで、
プレイして頂きたい作品だと思います。
てな感じですかね。
個別√なんかの感想は追ってちまちま書いていく予定ですので、
宜しければお付き合い下さると嬉しいです。
ではでは。
WHITE ALBUM2 レビューもどき(ネタバレなし!)。
今回はネタばれを避けた上での感想(これのこと)と、
プレイ済みの方が読まれるのを前提とした各√毎の感想の、
二段構えでいきたいと思います。
事前情報と購入動機(興味がなければ読み飛ばしてください)
出た当時から話題になっていたので、低アンテナで感度の悪い私でも流石に知ってはいました。
ただ、聞くところによると-introductory chapter-という序章でしかないらしく、
続編が出て完結らしかったのでなんか中途半端だなと感じてしまったこと、
また、どうせならWHITE ALBUMやってからかなーなんて感情が入り混じった結果、放置プレイしてました。
興味あるくせに興味のない振りしてる中学生みたいな奴。
それが恥ずかしながら当時の私でした。
で、実際に-closing chapter-が発売されるとなった頃、
当たり前のようにWHITE ALBUMに手をつけてなんかいなかったし、
そもそも卒論書いててそれどころじゃなかったし、金欠だったしで完全に失念していました。
卒論を終えても塾講師のバイトで生徒の受験対策に付きっきりだったり、
最後のモラトリアム期間を満喫していたり。
就職したらしたで慣れない社会人生活。
気付けば就職早々一ヶ月で仙台に飛ばされ、見知らぬ土地で初めての一人暮らし。
もうこのときには、名作としてネット上のいたるところで絶賛されているのを目にしていた訳ですが、
出遅れ感全開で諦めたのでした。
田中ロミオ信者を自負する身としては、
関心がRewrite Harvest festa!に移っていたのも大きかったのでしょう。
そんな私が今更プレイするきっかけとなったのは同タイトルのアニメを見たからです。
撮りためていたものの、恋愛描写が辛いとかの話で避けていたのですが、
意を決して1話目を視聴。
……何これ、面白いじゃん!
続けて2話、3話と全部消化して、続きが気になってしまい原作購入を決意。
この青空に約束を―でボロ泣きさせられた丸戸史明氏がライターというのは勿論知っていたので、
まあ間違いないでしょ、と即Amazonでポチった。
ここまでが購入動機。
無駄になげぇ……。
ストーリー概要
第一音楽室でギターを奏でる男が一人。
隣の第二音楽室の一人が、拙いギターに合わせてピアノを弾く。
その音色につられて歌い出した、もう一人。
そのとき、誰かが誰かに恋をした。
一足遅れの、してはいけない恋を。
惚れた腫れたの三角関係と言えばそれまでの、
だけれど、強く、深く、胸を打つ、
とある切ない冬のお話――
大まかな感想
泣いた。
全俺が泣いた。
噂通りに、胸が軋む。
張り裂けそうなほど痛む。
でも、なんでだろう。
手が止まらないんだ。
やめられないんだ。
駄目だってわかってるのに。
このままだと私どうにかなっちゃうってわかってるのに。
それでもマウスを規則的にクリックしてる自分がいる。
それはさながら中毒症状というか、ジャンキーというか。
それだけ惹きこまれるっていうのはやはりすごいことですよね、これ。
テキスト面
相変わらずの丸戸氏の安定感に完敗し、乾杯したくなります。
会話文を主体に、うまーく状況説明や心情を織り交ぜてくる技術に磨きがかかっていますね。
加えて、テキスト運びの巧みさ。
テンポというかリズムがすごくいい。
ウィンドウに表示される文字数にまで気を配っているのではと感じさせる洗練さ、無駄のなさ。
ほどよい場所での小まめな改行。
これらがテンポのよさに寄与しているのだろうと思われます。
何より特段難しい語句を用いず、
誰もが当たり前のように常日頃使っている言葉だけで文章を成り立たせているのがすごい。
それなのに全然つまらなくなくて、っていうかむしろ面白いのがスゴ杉内。
癖がないのに、癖になる。
なんだこれ、神業じゃねーか……。
ギャグも結構好きです。
よく思いつくよなーという言い回しも多いし、
とにかくこの点では万人に薦められます。
シナリオ面
これまた素晴らしい。
今までやってきた私のエロゲ遍歴内でもトップかもしれません。
家族計画とどっちが上か迷って悩んで、答えが出ないくらい。
世界が注目するピアニストや、校内一の超美少女こそ出てはくるものの、
不思議な世界に迷い込んだり、非科学的な力を使えたり、超常現象が起きるでもない。
ごくごく普通の日本で生活する彼、彼女らの恋愛話。
なのに、読める。
読ませる。読ませられる。
やり尽くされたと思わせる三角関係も、
これだけ徹底的にキャラクターの設定の作り込み、
人格、状況、心情を具に、ことこまかに描き、積み上げ、組み立てれば、
こんなにも素晴らしい物が出来あがるのかと感服しきりでございました。
面白くもあり、酷く胸が痛む裏切りも多々ある。
でもそれは、誰もが幸福になりたくて足掻いた結果に拗れてしまっただけで。
悪役は人によっては見出してしまうかもしれませんが、悪人は一人もいなかった。
大筋と言えるトゥルー√は存在しますが、
分岐する√のどれもが辿り着きうる可能性に満ちた、説得力のある√でしたし、
進んだら進んだらで、どれもが起伏に富んだ重厚なシナリオでして、
その完成度の高さには舌を巻かざるをえません。
また、違う√に入ったことで事象というか、
シーン、状況の見方や意味合いがガラリと変わる様はマジで鳥肌もの。
*これは、SCA自先生のツイッター上での言及が的確だと感じました。
これらは各√が密接に関わり合っているから成せる業なのでしょう。
毎回毎回どうやってこんなの思いついてるんですかね?
尊敬しますわ、本当。
エロシーンは、
うんまあなんていうか、エロさとか全然感じませんでしたね。
愛情表現の一種であり、背徳感の演出であったり、逃避であったりもした。
重要な場面であることは疑いようのないものですし、
この作品、はっきり言って濡れ場抜きでは語れないのですが、
残念ながらエロくはなかった。
……ぶっちゃけ、使えなかった(何かに)。
システム面
基本的なものは標準装備。
ことあるごとにセーブしておきたい私としては、
セーブスロット100個だと物足りなかったくらいでしょうか。
あの長さだったら倍は欲しいなぁ。
音楽面
文句なし。
流石Leaf。
まして今回は学園祭でバンド演奏するのがひとつの目的の作品でして、
肝心要の柱ですからね、ここがコケちゃうと色々とまずいのでしょう。
しかしながら、心配は御無用という感じで、
サントラ全部買っちゃったくらいにはボーカル曲もBGMもいいので、安心して下さい。
ボイス面
配役がいいですね。
どのキャラクターも声優さんらの好演が光ります。
主人公までもがフルボイスなのもよかったです。
(合わないと思えば設定で切られるので、その点はご心配なく)
よくあるじゃないですか、エロゲギャルゲの主人公が写真なんかで出て来ても、
前髪長くして目を映さないような演出。
詳しくないですけど、たぶん明確にキャラを描かないことで、
プレイヤーが主人公に重ねやすいように、感情移入しやすくしてるんじゃないかなって思うんです。
でも正直、個人的には好かないんですよね、それ。
そんな曖昧な存在に惹かれてくヒロインって安っぽくない?って思うので。
けれどこの作品は主人公である春希を、よくも悪くも描き切ってる。
ボイスもついて、キャラデザもしっかり出して、これがこの作品の主人公なんですよって。
そういった割り切ったスタンスが感じられて、よかったなって思います。
演技もよかったですしね。
総括
やりましょう!(某禿風)
youやっちゃいなよ!(某事務所社長風)
……なんて言いたいところなのですが、これが少し難しい。
何せ、テーマのひとつが「浮気」ですからね。
メインヒロイン二人の挟間で右往左往する主人公に辟易する人もいることでしょう。
受け付けない、肌に合わないという方に無理矢理薦めていい作品でないことは確かです。
そういうのにそこまで抵抗のない私ですら、
心を抉り、毟り取られるような感覚に陥ったのですから。
ただ、本気の恋愛模様を見て、感傷に浸りたい人。
傑作とも呼ぶべきストーリーに触れ、舌鼓を打ちたい人には是非やって欲しいなと思います。
それだけの価値があることは、
時間を忘れ、仕事を半分投げ出すようにして二週間がかりで駆け抜けた私が保証します。
点数を付けるなら百点満点の花丸です。
後にも先にも、これだけ泣いて笑って泣いて、
そして苦しんだ作品は出てこないかもしれません。
話題になるだけのことはあります。
願わくば、一人でも多くの方がこの作品に触れてくれますように。
ネタバレありの各√毎の感想はこちらから。
また、ご意見ご感想がございましたらコメントやtwitterにてお寄せ下さい。
反応がありますと、画面の向こう側で泣いて喜びますので、是非是非。
WHITE ALBUM2 √毎のレビュー ネタバレあり!
※プレイ済みの方が読まれる前提で書いています、ご注意ください!!
※ネタバレなしの感想はこちらからどうぞ。
-introductory chapter-
序章にあたります。
ここの話はなんというか、
過去にこういうことがあったんだよという、長い回想的位置づけのようです。
スター・ウォーズのエピソード1みたいな感じでしょうか。
スター・ウォーズ見たことないんですけど。
それを裏付けるように、
時折、振り返っているような描写が見られます。
例、かずさと雪菜が出会うシーン。
俺はこの時、全然気づいていなかった。
小木曽のタイミングが絶妙だったことも。
冬馬の表情がやたらと微妙だったことも。
話が進んでから、後で過去回想を明かすパターンはよくあれど(スター・ウォーズもそうですね)、
過去回想を最初に持ってきてリアルタイムで追わせてくれる作品は、
きっとそれなりにあるんでしょうけど、これといってすぐには浮かんできません。
結構面白い試みではないかと思います。
既に終わったことであるから、選択肢は出てこない(つまり、不可変である)。
俗に言う、一本道というヤツです。
あらすじを書くのが面倒なので書きたくなかったんですが、
一応簡単に要約してみました。
三人で仲良くいられた学園祭までは最高の時間だった。
しかしながら、お祭りの後からその関係は一変してしまう。
元々好き合ってたピアノ(かずさ)とギター(春希)の間にボーカル(雪菜)が割って入り、
春希を取ってしまった。
春希は春希で雪菜に惹かれていく自分を自覚しながらも、
一番好きな冬馬のことが常に頭から離れずにいた。
付き合っている二人と一緒にいることに耐えられないかずさは、
和解した母とともにウィーンへ渡る決意をする。
その事実にいてもたってもいられなかった春希はかずさに詰め寄る。
そして、本当は両想いだった事実に打ちのめされる。
結果、最後に春希は雪菜を裏切り、かずさに走る。
かずさは一時求めに応えるも、そのままウィーンに向け出立。
雪菜は立ち尽くす春希に寄り添い、自分をかずさの代わりにしてもいい、
代替物にしてもいいと甘い言葉を囁く。
みたいな感じでしょうか。
雪菜は過去のトラウマから、仲間外れにされることを極端に避けていた。
本作屈指のナンバー「届かない恋」に込められた春希の想いや、
かずさと春希の間に流れる空気、関係性から、
雪菜は二人はいずれ恋仲になるであろう予感をひしひしと抱いていた(と思う)。
そうすれば二人と、一人。
三人ではいられなくなってしまう。
それだけは避けたかった。
何よりの決め手となったのは、学園祭での演奏後、第二音楽室で舟を漕ぎ始めた春希に、
かずさがキスをする場面を目撃してしまったこと。
予感を確信に変えた雪菜は、目を覚ました春希に告白する。
女の子としての魅力に溢れた雪菜に、どんどん惹かれていった春希。
なし崩し的に応えてしまう。
これがひとつの決定的な分かれ道だったのでしょう。
かずさが逃げずに、起きているときの春希に想いを明かしていたら、
春希が意志を強く持って、雪菜の告白を断っていたら、
そもそも、雪菜が告白なんかしなかったら、
たらればに意味なんかないんでしょうけど、
何かが違ったら、ここまでの悲劇にはならなかったと思うと辛いものがあります。
一周目だとかずさがスリープ中の春希にキスしていた事実は伏せられているので、
かずさがここまで春希に入れ込んでることは分からず、だからこそ、
かずさが春希を好きだったことを明かすシーンのカタルシスったらないんですよね。
雪菜の気持ちも分かるし、魅力的な二人に揺れ動く春希の気持ちも分かる。
誰が悪いとか悪くないとか、そういう言葉で括りたくないなぁ。
強いて言うなれば、そういった状況に陥ってしまった不運が悪というか、ね。
あと個人的に辛かったのは、
春希がかずさに迫ってキスした際、「なんでそんなに慣れてんだよ!」みたいにぶつけられるシーン。
あれは、くる。
胸がいてぇ。
空港での独白は雪菜のものだったと明かされる訳ですが、
改めて、こんなはずじゃなかったんだろうな、と。
ああ……。
-closing chapter-
件の別れから三年後。
峰城大に進学して尚、付かず離れずな微妙な距離感のままの二人。
春希は実家を少し離れて一人暮らしを始めていた。
雪菜との距離をとるために、三年になってから転部したり、バイト漬けの日々を送る。
伊緒や武也らのお節介によってクリスマスデートをするも、
かずさを忘れられない春希のひたむきな愛を、
春希が出版社のバイトで担当したかずさの特集記事から見出してしまった雪菜は、
かずさを忘れたと嘘を吐く春希を拒絶する。
この一件で心が折れかかってしまった春希は、
大学の同級生、バイトの後輩、バイト先の上司に逃げるか、
雪菜に再度向き合うかで√が分岐する。
和泉千晶√
大学の同級生。ゼミ仲間。
女を感じさせない女。
今の春希にとって心地いい、都合のいい女。
だがそれは演技だった。
真の姿は演劇サークルの花形、演技派美人女優。
三年前の学園祭のあのときから、ずっと片思いしていた女性。
あのときの三人の再現を、舞台を作り上げるため、
春希に、そして雪菜に接触したのだった。
シナリオとしてはすごくよく出来てたんですよね。
ある種の狂喜めいたものをもストーリーに組み込ませ、かつ馴染んでいる点が。
ああこれ、すげぇ計算されてるって。
作中作のお芝居を絡めてくる手腕には脱帽しました。
アイドルになり夢を叶え、そして恋も、両方ともを手に入れようとするする在り様は、
雪菜という存在にある種の解を示していると思うのですが、
加えて、WHITE ALBUM(無印)も踏まえているんじゃないのかなと。
プレイしたことがないので、憶測とすら呼べない思いつきなのですが、
あれは彼女がアイドルになり、自然と一緒にいる時間が減り、疎遠になっていく。
そして主人公は浮気をしてしまう、みたいな話だと聞いていますからね。
無関係とは言えないのではないのかなと。
やはりいつかやってみたいですね、WHITE ALBUM。
閑話休題。
あれこれ書き、脱線してしまって申し訳なかったのですが、
取り敢えず、「春希にとっての都合のいい女」という演じてた部分のキャラクターが、
個人的にあんまり好みじゃなかったんですよね。
演じてまで近づいてきた本当の和泉は結構好きなんですけど、
演じてたキャラ自体が好かない。
あと、なんとなくですけど、スパイラル〜推理の絆〜思い出しました。
あはは。
ああ、それと、峰城大FMで「届かない恋」が流れる度、
なんで一度きりの、あの一曲の音源が流れてるんだろ?って不思議に思っていたのですが、
その点を自然に回収してみせたのには唸ってしまいましたね。
三年前から計画的に動いていたとか、
全然思い至らなかったですわ。びびりました。
ただ、大学内のコミュニティラジオ(ミニFM?)如きに、
あれだけの影響力があるかは少々疑問ではありますが……。
杉浦小春√
誰かさんによく似た女の子。
小春希。
これ、小春が春希にかかっているんですよね。
くすりときます。
出会いは彼女の友人である美穂子を酷い形で振った春希を問い詰めるところから。
何故かバイトで一緒になり、知らぬ間に学園祭の頃の春希を知り、段々と気になる存在に。
雪菜に拒絶された夜。
傍にいて、話を聞いてくれたことにより√突入。
けれど、その場面を美穂子に目撃されてしまっていたことを切欠に、
坂を転げ落ちていくかのように彼女はあらゆるものを失っていく。
春希を拠り所にすればするほど泥沼から抜け出せなくなっていく小春。
この√も相変わらず胸が痛かったです。
卒業間近に、積み上げてきたものが音を立て瓦解していく過程はもう言葉にできない。
つくづく間が悪いなぁと思いつつ、雪菜の弟の孝宏という清涼剤に幾許か心が救われました。
孝宏くんガチイケメンでしたわ。
そのくせ報われないとかこれまた泣ける。
ただ、そういった境地でも、
償おうと前を向き、歩き始める展開は胸熱でした。
その背中を押した雪菜。
気丈にも笑顔で春希を見送ったものの、
小春が喫茶店の外から彼女をみたときの泣き顔に全俺が号泣。
このとき、小春を諭すとき。
雪菜は中学の同級生らとカラオケで歌ったと明かす。
歌うことで三年前のあの頃を思い出し、春希を嫌いになってしまう気がして、
ずっと歌えなくなってしまっていた雪菜。
けれどこのときには既に春希との決別をしているため、
嫌いになるつもりで、歌ったんでしょうね。
でも嫌いになれずに泣いてしまう事実に全俺が号泣。
この√小春が可愛過ぎてやばかったです。
そして立ち上がって、向かい合い、償い、
浪人して一年後合格する格好よさも最高でした。
サブヒロインでは小春か麻理さんですわ。
風岡麻理√
仕事バリバリで、厳しくも情に厚い、奇麗なお姉さん。
何それ、非の打ちどころないじゃん……。
雪菜の拒絶に打ちひしがれて出版社に逃げ込んで、
二人で売れ残ってた安物ケーキをつつくことから√突入。
この人、可愛過ぎです。
こんな素敵上司いたら惚れざるをえない。
人情に溢れているのがいいですよね。
記事を書いた雑誌の見本誌を必要ないですと断った際の、
「だから、そんなに頑張ったのに…
誰も喜んでくれる人がいないとか…
そんな寂しいこと、言うなよ!」
の台詞なんかは目頭が熱くなりました。
その後の電車での、
「バカにしやがって…っ!!」
でどうしようもなく惹かれてしまう私がいました。
ただこの√に入った際の春希が、
何故か今までになく屑というか、ショボい、へタレ。
甘えたがりの糞野郎に堕ちてしまっていて、
こんな奴に麻理さんはもったいねぇ!! もったいねぇよ!!
ってなりました。
最後は面目躍如の活躍をしますが、
それまでの過程が頂けない。
無性に悔しさが残りますね、これ。
小木曽雪菜√
あの拒絶があっても、やはり雪菜以外考えられない春希は、
雪菜に振り向いてもらえるよう向き合う覚悟を決める。
冬馬の気を惹きたくて弾き始めたギターを、
雪菜のために捧げると決める。
歌えなくなってしまった彼女を、
また歌えるように。
夜な夜な電話越しにギターを聴かせたことや、
柳原朋のひたむきな情熱なんかがかみ合って、
バレンタインコンサートは成功し、二人は元の鞘に収まる。
こんな感じだったと思うのですが、
まあ傍から見ててまどろっこしい二人だなぁ、と。
それだけのことが過去にあったのは分かっているし、安易に割り切られても困るんですけど、
それでも、二人とも中途半端さが目立つ気がしました。
雪菜は雪菜で、もっと積極的になるか、あるいは早々に見切りを付けるべきだったと思いますし、
春希も春希で、本気で無視する気なら転部ではなく他大に編入するなり海外に逃げるなりすべき。
けれどそうはせずに、停滞したままでいた。
結局のところ、互いが互いを想い合ってるから踏み込めないし、かといって離れられもしない。
袋小路だったんですよね。
そんな錆ついたままの関係を無理矢理動かそうとしてのクリスマス、
反動であんなことになってしまうのは、ある意味自然だったのかもしれません。
ともあれ、和解に至るまでのひとつの切欠となった柳原朋の存在は、
存外大きかったんだなぁと今更ながら。
全く、いいキャラしてるよ!
まさかicで名前だけ先行していたキャラがこう絡んでくるとは。
よく練られているなぁと改めてまざまざと思い知らされました。
-coda-
ccでの雪菜√の二年後からスタート。
紆余曲折を経て、艱難辛苦をともに乗り越えた先の未来で待っていたものは、
フランス・ストラスブールの地にて起きた、五年振りの、かずさとの再会であった。
雪菜に黙ったままインタビューをし、日本に帰国。
その後、隠したままカメラ片手に密着独占取材。
春希と雪菜の間に生じる不穏な歪み。
反して、春希とかずさの間の溝は徐々に埋まっていく。
またしても二人の間で揺れ動く春希……。
かずさノーマル√
思い出の旅館に春希とかずさは逃避行する。
そして、そこで、結婚しようと誓い合う。
しかしながら、かずさは自分のために全てを擲っていく、
壊れていく春希を見続けることが出来なかった。
そんな春希を治してくれるのは雪菜だけだと信じ、
雪菜に春希を返そうと決意する。
決別としての追加公演で、最高の演奏をしたかずさ。
これだけの演奏ができるのだから自分と春希は別々にいたのだとも、
これから先、春希がいなくてもやっていけると言わんばかりとも取れる演奏だった。
そしてかずさは春希の前から姿を消す。
一年後、雪菜の献身的な介護の甲斐もあって、壊れていた春希は少しずつ回復していき、
このまま雪菜とともに歩いていくことを誓う。
この√、とても感慨深かったですね。
逃避行したものの、そのまま逃げてしまうことなく、
春希の幸せだけを考え、戻る選択肢を選び取ったかずさの心中を思うと、胸が痛む。
ただ、この選択肢を選べたのは、かずさが母の病を知らなかったからなんですよね。
拠り所と呼べる、母の曜子と春希の内、春希を失った以上、残すは曜子だけなんですが、
その曜子までもを失ってしまったら、かずさは歩いていけるんだろうかとか、
深く考えれば考えるほど、より、きりきりとしてきます。
かずさはね、一緒に逃げ続けられたらね、
どんだけよかったんでしょうね。
かずさトゥルー√
母の曜子の病を知らされ、拠り所を失うかずさを放ってはおけないと、
かずさを護ると決意する春希。
かずさも、雪菜を裏切り、自分を選んで欲しいと告げる。
婚約までしていた雪菜に春希は全てを打ち明け、
職場に辞表を出し、仲間内にも真実を告げる。
雪菜の家族会議にも出席を余儀なくされ、裁きを受ける。
最後に雪菜との決別シーン。
雪菜は三人でいられることを望んでいたが、
小木曽家の一員であることを辞められないことに気付き、別れを受け入れる。
このとき、雪菜は交通事故にあっていたのだが、
余計な心配をさせないためにただ黙っていた。
春希が去った後、耐えきれずに崩れ落ちる雪菜。
全てを捨てた春希は、雪菜に捧げたギターをも残し、
かずさと共にウィーンへと旅立つ。
お見送りは冬馬曜子ただ一人だった。
二年後、かずさの専属マネージャーとして忙しい日々を過ごす中、
社長(冬馬曜子)からのメールに添付されていた動画には、
例のアコギで(明言はされていないが恐らくそうだろう)弾き語りをする雪菜の姿が。
元気ですか? 私は今も歌っています。
いやぁね、作中屈指の疼痛イベントきましたよ、これ。
柳原朋の糾弾も辛いし、依緒の見下げ果てたと言わんばかりの言葉も突き刺さるし、
最後まで庇おうと、力になろうと、説得しようとする武也の優しさが染みるし、
何より小木曽家での弾劾裁判ですよ、孝宏くんの拳がすげぇ痛い。
悪いのがあくまで主人公で、
正しいのが向こう側だからもうままならねぇ!
世界中が敵になっても、私だけはあなたの味方でいる、みたいな言い回しよくありますけど、
実際に周囲の期待を裏切って、とかく責め続けられるこのシチュエーションに遭遇したら、
とても軽はずみには使えない言葉なんだなと思い知らされました。
はっきり言って、職場にも仲間にも恋人にも何も言わず海外逃亡だって、
やろうと思えばできたはずなんです。
それでも、例え逃げるような形であれ、一番好きな、愛している人のために、
周囲の大切な人たちを傷つけつつも最低限の誠意を見せた春希は、
そういった意味合いでは正しかったと私は思っています。
何もかも捨てて終わるお話は何度かお見かけしましたが、
そういった場合こういう切り捨てられる側をしっかり描いてなかったものが大半だった気がします。
全てを捨てるという行為にはこれだけの人を不幸にする道でもあるのだと、
逃げずに示してみせたこの終わらせ方は、正直に言って私的に鳥肌ものでして、
極めて深い感銘を受けました。これは、すごい。
雪菜トゥルー√
雪菜は、自身を逃げ道にしようとする春希を許さず、
今一番辛いかずさを支えるようにと、春希を突き放す。
春希はその言葉を背に、かずさを献身的にサポートしようとするが上手くいかない。
それもそのさず、春希は春希で、冬馬の逃げ道になろうとしなかったから。
重ねて、冬馬は母の病状を知ってしまい、更に不安定に。
かずさを助けて、とのメールを受け取った雪菜はすぐに駆けつけてくれ、
春希から託されたバトンを手に、下かずさの元へと向かう。
アンサンブル増刊号のタイアップ企画として、ミニアルバム制作を持ちかける。
これは開桜社、ナイツレコード、冬馬曜子オフィスという、
三人各々のバックを巻き込んだ企画であった。
雪菜の根強い説得により、かずさの頑なだった心も段々とほつれていく。
ビンタの応酬合戦や春希のギター演奏などのあれやこれやが積み重なり、ようやく説得に成功。
タイムリミットの迫る中、追加公演とミニアルバム制作に動き出す。
まるで五年前のあの頃のように。
三人一緒に。
冬馬の思いつきで最後のトラックはオリジナルのポップスに。
春希の詞。
冬馬の曲。
雪菜の歌。
そのミニアルバムの名前は、「WHITE ALBUM」
全てを無事に終え、日本への未練を消化したかずさは日本に残ると決める。
そして、春希を送り出す、雪菜の元へと。
春希と雪菜はお互いの気持ちを曝け出し合って、
ついに、真の意味で、結ばれる。
EDでは二人の結婚式の様子がCGで明かされる(台詞はなし)。
まあこれが、ひとつの正しい着地点なのでしょう。
三人の誰もが負い目を抱きつつ、
それでもみんながそれなりに幸せになっているのだから。
ハッピーエンドとはどう考えても言えそうにないんですけどね。
大団円も、とてもじゃないですけど、使えそうにありません。
なんのかんの言ってかずさが我慢し続けることに変わりはないんでしょうし。
かずさに、春希以外の人が現れる可能性を信じたいものですが……。
ともあれ、かずさ√の、二人以外の他全員が報われないエンドや、
ある意味なし崩し的、妥協とでも呼ぶべきものによって、
雪菜に行きつくエンドよりは救いがありますけども。
でもやはり、一時の間だけでも、
昔のように三人でバカやってる姿を見られたときはすごく快い気持ちに浸れました。
そうそうこれこれ。
これが欲しかったんだよ!
って感じで。
こういった空気を作り出すのが、本当に上手いライターさんだよな、って思います。
勉強になります、真面目に。
総評。
傑作でしたね。
時間を忘れてのめっていってしまいました。
先にも書きましたが、
今までずっとマイベストエロゲだった家族計画とタメはれるレベル。
どっちが上で下なのか、甲乙つけ難いです、はい。
なんなんでしょうね、真に迫るとでも言うんでしょうか。
緻密な構成と、巧みな文章が、これでもかとリアリティーを引き上げている。
文句のつけようがないですね。
ふぇえ……(おしっこ洩らす)
ただ、気にかかる点も少しあります。
春希の親の件です。
これだけあらゆる点に解答を示してきたにも関わらず、
この点は濁ったままですよね。
雪菜√でちょっとは拾ってましたけど、それだけ。
ここをどうストーリーに反映させてくるのか気にかかっていただけに、
消化不良感が拭い去れません。
ひとつの重要なポイントだと思っていたのですが、
こと恋愛を描く上で不要と見做されてしまったのでしょうか……。
うーん。
加えて仕方ないとはいえ、五年後の世界は、
サブヒロインの出番が皆無に近いのが残念。
実際社会人になると、相当懇意な関係でもなければ、
同期とか後輩と縁遠くなるのはごくごく自然だし、
麻理さんは海外だし、致し方ないっちゃ、致し方なしなのかなぁ。
最後に。
キャラクターに関して。
大抵こういったゲームをやっていると、贔屓にしたくなるキャラが出てくると思います。
萌えとか、そんな感じの言葉で言い表されることの多いマイフェイバリットキャラ。
ただ今回は、この娘がいちばんっ!
みたいのに、いまいちピンと来ませんで。
どのキャラクターも同様に愛らしいというか。
みなそれぞれに魅力的で、もう選ぶのが困難過ぎます。
かずさ派、雪菜派なんて、実に対立を生みやすい造りのゲームの癖に……。
√の完成度もどれもが行き着きかねない可能性のある着地点であって、
サブヒロインの√を、単なるifシナリオと切って捨てるのに抵抗があります。
かずさと雪菜だったらうーん、どっちなんだろうなぁ。
高校時代の不器用に格好つけてて、実際格好いいかずさが一番好きなんですけど、
五年後の未成熟なままのかずさは妙に苦手で。
雪菜は雪菜で、したたかで計算高いところがちょっと気にかかる。
けどあざとかわいくもある。
選べない。
なんだかんだ、小春が一番好きかもしれんね。
ロリコンという汚名を被ってでも好きなもんは好きなんだふっひゃー。
春希のために一年棒に振って下さいオナシャッス!!
そんで、春希について。
クズ主人公とかなんか散々呼ばれてますけど、
個人的には比較的好意的な感触の主人公です。
仰る通り、重要な場面で平気で嘘を吐いたり、隠し事もする彼です。
これと定められず、ずるずる女の間を行き交ったりもします。
卑怯やらクズやら言われても、まあしょうがないのでしょう。
ネットの感想を漁っても社会人にあるまじき立ち振る舞いみたいに書かれていたりする。
けれど私は、私自身が人間として成熟していないからでしょうか、
結構リアルに感じられ、いやいや、人間って大人になろうがこんなもんでしょって思うのです。
そんなにもみなさん公明正大なんですかね。
つっつかれて、埃ひとつたたないまっさらで奇麗な体なんですかね。
残念ながら私は、そんなことは嘘でも言えないような人物だし、
ときに自身の欲望に屈し、それを優先してしまうであろう駄目人間な気がします。
依緒の、春希の浮気は浮気じゃないんだよみたいな台詞が的を射ているなと思いました。
単なる浮気だったら、クズ呼ばわりもやむなし。
平気で二股かけて、悪びれる様子もないようなのが見下げたクズ野郎ではないでしょうか。
迷って苦しんで、そういった関係に至った春希。
浮気といえば浮気なんですけど、それでも最低限の誠実さを、どの局面で保っていたと思うのです。
そういった憎み切れない人物である彼は心底人間くさくて、やっぱリアルだわなと思いました。
全面的に肯定する訳でもないし、同情もしないけど、
だからと言って、一方的に非難するのもなんか違う。
それが私なりの解答です。
私が男だからこういうところに落ち着くのかもしれません。
女性の方のホワルバ2の感想聞いてみたいなぁ。
あと、このゲームをやっていて、大学の後輩と話したことを思い出したりしました。
これとは全く関係ないマンガで、主人公が彼女に別れを告げて別の女性と恋仲になる話のヤツ。
私「あの展開がどうにもねー」
後輩「そうですか、僕は新しく好きな子が出来たら別れてそっちに行きますけどね」
私「そうか……」
みたいな話をしました、確か。
後輩君は覚えていないかも知れませんが。
それに細部が違うかもしれないし、二年以上前だからあんまり自信ないです。
でも実際、自分だったらどうなんだろうって、
あの日からずっと、時折考え続けてきたんです。
今付き合っている彼女がいて、でも本当に好きになってしまった女性がいたらどうするか。
勿論付き合う彼女も好きでただ一番じゃないってだけ。
けれど一番でもないのに付き合っていること自体不誠実なのか、とか。
結局、そういった立場になったことがないので、結論は出ないままなんですが、
ケースバイケースなんじゃないかなぁというのが本音。
これが正解ってものばかりが、この世の中溢れている訳でもないですしねぇ。
後書き
だらだら蛇足まで書いてしまい申し訳ございませんでしたが、
一先ずここらでWHITE ALBUM2の感想を終えさせて頂こうかと思います。
長々と書いたはいいものの、纏まりもないし、かなり自己嫌悪。
読み返してる内に勝手に赤を入れ手直しするかもしれませんが、ご容赦下さい。
これだけ重厚な作品に触れてしまうと、
どうしても浮かび上がる感情がひとつやふたつじゃ済まなくて、言葉の選定が難しいんですよね。
こっちのほうがいいんじゃないかみたいなのもありますし、
時間を置いてみたら違う解釈が生まれてくることもありそうですし。
ただ、一応感想として書き終えられたので、
ようやく一区切り付けそうです。
最終プレイから一週間以上経ってて、思えば今月はホワルバ2一色でした。あはは。
そんでもってVita買ってVita版やろうか悩み中です。
まあそこんところは今後次第ですが。
そんな感じでお付き合いありがとうございました。
よろしければ、今後も引き続き感想等お付き合い下さると嬉しいです。
それではでは。
※追記
ご意見ご感想等々ございましたら、コメントやtwitter辺りで返して下さるとすごく嬉しいです。
毎回こんな感じのを最後に添えているのですが、全く以て反響ゼロでしてむっちゃ悲しいので、
今回は正直に、構ってちゃんでいこうと思います。
なんでもいいので、万が一にでも思いついたことがあればお教え下さい。
より考察を深められたらお互い有意義でしょうしね。
加えて、今後の参考にさせて頂きますので。
それでは今度こそ本当にさようなら。
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